05話 – ブリーク・フォール墓地(2)

2019-06-25


 

吹き抜けを見上げるとかすかに月明かりが差し込んでいることに気付いた。昼頃墓地に入り、もう随分探索を続けている。
この墓地はどこまで続くのだろうか。疲れが溜まってきていることを感じながらさらに奥へ進む。

おそらくここが盗賊が持っていた日記に書かれていた物語の広間だろう。金の爪が扉を開く鍵らしい。
「この三つの絵が描かれた輪を適切に並べて、この金の爪をはめ込むと扉が開く、という仕掛けですね…」
「その絵の正しい順番は分かるか?」
「ええ、休憩中にこの爪を見ていたら、ほら…ここに答えが」
「爪にも三つの絵が描かれているな。いたって簡単な仕掛けにも思えるが…とにかく合わせてみよう」
ロードの言うとおり、扉は簡単に開いた。

扉の奥に進むと祭壇らしきものが見える。ここがファレンガーの言っていた中央の間だろうか。

ロードは棺から出ようとするドラウグルを起き上がる前に難なく倒してしまった。
「これ…棺の中にあるこの石版。ドラゴンストーンじゃないか? …思ったよりあっけなく見つかったな」
ロードが石版を手に取る中、私は奥の壁が気になった。

何かの文字が書かれている壁だったが、その中の一つだけ光を発している文字がある。よく見ようとそれに近づいた。
「メルヴィナ?」

声が聞こえる。分からないが、どこかで聞いたような声。

音の流れが身体に入るような感覚に襲われ、私は意識を失っていた。

 

「……ん」
目が覚めると私はベッドロールの上に横たわっていた。

「…メルヴィナ、気付いたか?」
「あ…私…」
ロードが私の顔を覗き込む。

「…良かった、目が覚めて。君の身体に何か光のようなものが入っていくのが見えた。その後気を失って…なんともないか?」

「わからない…。声が聞こえて…近づいたら、光が身体を流れてきて…、私、どうなってしまったのか…」
「落ち着いて。…身体のほうは大丈夫なんだな?」
「ええ…。なんともないみたいです」
「それなら良かったよ。…君は一体何者なんだ? 記憶を無くしたのはこれと関係があるのか? あれは魔法なのか全く違う何かかそれとも…」

「…ロード。あなたのほうこそ落ち着いてください」
「あ、ああ。すまない。初めて見る光景に興奮してしまった」
「あの、私どのくらい気を失ってしまったのでしょう」
「数時間ほどかな。おそらく探索の疲れもあったんだろう。ベッドロールを持ってきたのは正解だったな」
「ありがとうございます。私、何から何まであなたに頼りっぱなしで…」

「気にするな。どの道明るくなってから墓地を出ようと思っていたんだ。少し腹ごしらえしたら出発しよう」

軽い食事を済ませ、出発前にあの壁をもう一度見た。

「この壁…何なんだろうな。古代ノルドの文字なのだろうか」
「分かりません。これは、ファレンガーさんに報告したほうがいいでしょうね」
「そうだな。とにかく、石版も手に入れたことだし、さっさとここから脱出しよう。歩けるか?」
「ええ、大丈夫です。行きましょう」

 

来た道をたどり、リバーウッドに戻る。まずはリバーウッド・トレーダーに行って、早くこの爪を渡してあげたかった。
カウンターに金の爪を置くとルーカンは大きな声で笑った。
「見つけたんだな? やはり奴は墓地に行っていたか…。ん? 変だな…思っていたより小さいように見える。気のせいか、ハッハッハ」

「あなた達が無事に帰ってきてくれて本当に良かったわ。それにこの爪も取り戻してくれて…本当にありがとう」
「俺と妹のために凄いことをやってくれたあんた達のことを決して忘れないよ。盗賊を始末してくれてありがとう。これは約束していた金貨だ、受け取ってくれ。またこの町に来たら是非立ち寄ってくれ、カミラと俺が喜んで手伝うよ」

こちらとしては、この爪が盗まれたからこそあの墓地の最奥部に辿り着けたこともあってか、多少複雑な気持ちはあった。
だが彼らの喜んだ表情を見て、無事に返すことが出来て本当に良かったと思い詳細を話すことは止めた。
「もう盗まれないようにしっかりと管理しなよ。カウンターに置いてたんじゃ盗んでくださいと言ってるようなものだ」
去り際にロードが笑いながらそう言うとルーカンは頭を掻いて苦笑いした。

「さて、と。あとはこの石版を届けるだけか…」
「ええ」
「メルヴィナ。まだ疲れが取れないだろう?」
「え?」
ロードは目線を馬車に移した。

「ホワイトランまで馬車で行こう。俺もさすがに眠くなってきた」
「あの、探索から一睡もしてないのですか? 私が眠っていたときも…」
自分が気を失っている間、てっきり彼も休んでいたのだと思っていた私はその言葉に驚いた。
「うん、まあ…。敵の気配は無くとも、何が起こるか分からないからな。一応起きてたんだ」
「そんな…ごめんなさい。私ばかり暢気に眠り込んで…」
「はは、いいんだよ。それが責任を持って同行するってことだからな。それじゃ、行こうか」
「はい」

つくづく自分は幸運なのだと思った。
ヘルゲンを脱出できたのも、ホワイトランへの道中や墓地探索で傷一つ負うことなくこられたのも自分一人の力では無理だった。
「ロード。本当に、ありがとうございます。同行してもらったのがあなたで良かったです…」
そう言うと、彼は少し眠そうな目をこすりながら「よせよ、照れるだろ」とおどけてみせた。


 

6

RP日記

Posted by magmel