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29話 – 外交特権(5)

  • 2016.04.09
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


雨音で目を覚ます。
何時間眠ったのだろうか。ゆっくりと体を起こすと頭痛がした。
「…んっ」
額に手を当てるとなんだか熱い。
(熱? 風邪かも…。薬…は透明化と隠密の薬しか持っていなかったわ。風邪って回復魔法で治せたかしら)
ベッドに座り治癒の魔法を自分にかけているとルーシスが入ってきた。
「おはよう、メル。うん? どうした」
「あ、おはようルーシス。少し頭が痛くて…回復魔法をかけていたの」
「さては風邪を引いたな」
ルーシスは私の額に手を当てて確かめる。
「…それほど心配はないだろう。だが回復魔法では怪我の治療はできても風邪自体は治らんぞ」
「そうよね、リバーウッドで薬を買うわ…。今何時くらい? まだ雨降ってるわね」
「6時過ぎだ。雨がやむまでは動けんな。折角だ、横になって少しでも休んでおけ。食事を持ってこよう」
「ありがとう、そうさせていただきます」
再び横になり目を閉じた。

食事をとった後しばらく眠って、目を開けるとベッドの側にルーシスがいた。
「メル、気分はどうだ?」
「ええ、回復魔法のおかげかさっきよりは楽になったような気がする。…ずっと側にいてくれたの?」
「そりゃあ心配もするさ。暇つぶしにお前の寝顔を見ていたわけではないぞ」
「…暇つぶしね」
「…両方だ」
二人顔を見合わせて笑う。
「雨が止んだ。そろそろ出発しようかと思うのだが、大丈夫か?」
「大丈夫よ、行きましょう」
身支度を整え、宿屋の女将に十分にお礼をして出発した。


雨が上がったばかりの、少し湿った空気と木々の匂いを胸に吸い込む。

私は再びロードの馬に乗せてもらった。
早く一人で馬に乗れるようにならなければ。彼らに迷惑がかかるし、なにより…身が持たない。


森を抜けるとイリナルタ湖が見えてきた。
「大きな湖なんですね」
「この湖を見たのは初めて?」
「はい。ソリチュードへ行くときはリバーウッドからホワイトラン経由で行っていたので」
「そうか。まあ、俺もこの道はあまり通ることがないけど。イリナルタ湖はスカイリムの水源の一つだよ。ここから流れるホワイト川はウィンドヘルムより先の海まで続いているんだ」


先へ進むと、湖の水際を道が通っている。
湖面を馬上から眺めた。
「青くて綺麗…」
「いつもは気にせず素通りしていたけど、こうして見てみると綺麗な湖だな」


「メルヴィナ。見えるか?」
「え?」
「頭、もっと上げてもいいぞ。下を向いてたら湖が遠くまで見えないだろう? 今はルーシスが前を進んでいるから、多少視界が遮られても問題ないよ」
「そうですか? では、すこしだけ…」
顔を上げて湖を見渡す。
「わあ、やっぱり違いますね。遠くまで見渡すと…本当に綺麗」
「ハハハ。だろう?」
耳のすぐ側でロードの笑う声が聞こえた瞬間、喉から心臓が飛び出しそうになった。
慌てて顔を下げる。
「あれ? もういいのか?」
「えっ、ええ…」
顔を見られないように必要以上に頭を下に向けた。
突然だった。これまで全く意識していなかった彼の声に、過剰に反応してしまった。
(びっくりした…。どうして、こんなに)
息苦しい。鼓動の激しさがおさまらない。

「ロード、このあたりで馬を休めないか。腹も減っただろう」
まるで慮ったようにルーシスが声を掛けた。


「そうだな。そうしよう」

馬から下りて、湖を見ながら深呼吸をした。
「んー…っ」
両腕を上に伸ばしてこわばった身体をほぐしているとルーシスが隣に来た。
「メル、身体の具合はどうだ?」
「頭痛はないわ。治ってしまったのかも」
「『頭痛は』な。まだ顔が赤いぞ」
「…っ!」
ルーシスは含み笑いをして、水際で馬に水を飲ませているロードに視線を向けながら小声で話す。
「助け舟を出してやったんだ。ありがたく思えよ?」
「…見ていたの?」
「会話が聞こえてくるのだ、聞いていれば分かる。あいつは案外鈍い男だな。お前のそんな顔を見たら、自分に気があると分かりそうなものだが」
「そのほうがいいわ。…気付かれたくないの」
「そうだったな。で、どうする? ここからリバーウッドまでは私の馬に乗るか?」
「ええ、そうしてもらえると助かります。…今度、乗馬を教えてね」
「フ、フフッ。余程…お前には刺激が強かったようだな」
笑いをこらえるルーシスを睨む。
「す、すまん。いや、でも…その純真さが可愛らしくもあるのだぞ」
ルーシスはそう言って、私の頭を軽く撫でた。
「もう…いつも子ども扱いするんだから…」
「私にとって、お前はいつまでも子供同然だぞ?」
頭にポンポンと手を乗せて彼は笑った。

湖を見ながら昼食をとった後、今度はルーシスの馬に乗せてもらいリバーウッドへ向かった。


到着してすぐにスリーピング・ジャイアントへ急いだ。


隠し部屋に行くと、デルフィンが迎える。
「生きて帰ってこられたわね、良かったわ。預かっていた荷物はそこの箱の中にあるわ、約束したとおりよ。それで、何か分かった?」
「ドラゴンの調査報告書です、読んでください。サルモールはドラゴンのことを何も分かっていないようですね」
「本当に? 信じがたいわ。確かなの?」


「間違いありません。エズバーンという人物を捜しているようです。彼はブレイズ…心当たりは?」
「エズバーンですって? 生きているの? サルモールに殺されたのだと思っていたわ。あの変人…。奴らもドラゴンのことを調べようとしていたのなら、当然彼の足取りを追ったでしょうね」
「サルモールは、エズバーンに何を求めているのでしょうか」
「エズバーンはブレイズの公文書保管人だったの。彼はブレイズに伝わるドラゴンの古伝承に精通していたわ。取り付かれていたといった方がいいわね。その頃は誰も気にとめなかった。私達が思ってたほど変な人じゃなかったのね、きっと」
「ブレイズがドラゴンのことを知っていると考えているのですね」
「皮肉よね。宿敵の間柄って、全ての災難は相手のせいだと思い込んでしまうのよ…。とにかく、奴らよりも先にエズバーンを見つけなければ。ドラゴンを止める方法を知っていそうなのは彼しかいないのよ」
「大使館で捕らえられていた男性の話では、エズバーンらしき人物がリフテンに隠れているようですが…」
「リフテン? それなら多分ラットウェイね。私ならそこに行くわ。リフテンに行ってブリニョルフと話して。彼は…いいコネを持ってるわ。手始めとしては悪くないはずよ」


「リフテンのブリニョルフですね…分かりました」
「お願いね。今日はここでゆっくり休んでいきなさい、オーグナーにご馳走を用意させるわ。代金は一切とらないから遠慮せずどうぞ」
「ほう、意外だな」
ルーシスが言う。
「このくらいは労をねぎらわせてちょうだい。リフテンまで行ってもらうことになるのだし」
「ありがとうございます。では、遠慮なく…」


 

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