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28話 – 外交特権(4)番外

  • 2016.04.04
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


「ふぅ…」

「女将さん。服、ありがとう。助かりました」
「どういたしまして。あら…さすがにズボンはちんちくりんね。お兄さん大きいから」
「いえ…十分です。寝るだけなんで」

「ロード、一緒に飲まないか。まだ寝るには早いだろう?」
「そうだな」
「フ…フフフ…ッ」
「…何がおかしい」


「いや、すまん。そのズボン…。そうか…こういうとき困るよな…」
「…どうせ俺は規格外のノルドだよ」


「それにしても、お前は剣を肌身離さず背負っているな」
「いざというときのためにな。背中に感じるこの重みが落ち着くんだ」
「そういうものなのか。まあ、このご時世用心するに越したことはない」

「ところで話は変わるが…お前、ソリチュードでメルと何があった?」
「え?」
「感情の欠如したあの子を元に戻すには、それ相応のきっかけが必要と私は考えていた。時間で解決しそうには見えなかったからな。何か大きく心を揺さぶるような出来事でもあったのではないか?」
「…断定は出来ないが…。祭の夜に彼女に笑顔が戻っていた」
「祭? オラフ王の焚刑祭か? そういえば、毎年楽しみにしていたな…」
「俺…七年前に彼女と会っていたんだ。その祭前夜に」
「なんだと…? そうか、やはりお前があのときのリュート奏者か…! どこかで会ったような気がしたのは気のせいではなかったか」
「すっかり忘れていた。彼女は、ずっと憶えていてくれたようだけど…」
「それはそうだろう。あのときのあの子はそれはもう、あまりの感動に放心状態だった。初めて音楽というものを聴いたせいもあるが…お前の演奏が素晴らしかったからだろう。私でも聴き入ってしまったのだからな。それからというもの、毎年お前目当てにソリチュードへ行ってもお前はいなくて、いつもがっかりしていた」
「まあ、色々あってな。大学から離れていたんだ」
「そうなのか。では、メルは七年ぶりにようやくお前のリュート演奏を聴けたということか?」
「そういうことになるな」
「あの子の感情を揺さぶり戻したのはお前のお陰か。感謝する…ありがとうな」
「いや…楽器には二度と触れないつもりだった自分を変えてくれたのは彼女だ。礼を言うのは俺のほうなんだ」


「…様々な偶然が重なった、奇妙な巡り会わせだと思わないか。ずっと焦がれていた男が、別の形で自分の前に現れ…自分を守ってくれているのだからな。壊したくはないだろう…」
「……」
「色々あったのだろう、お前が吟遊詩人から帝国兵に転向した理由は聞かない。ただ、これからも、あの子を守ってやって欲しい…」


「勿論、そのつもりだ。でなきゃ、あんなこと…」
「うん?」
「いや…。なんでもない」
「…気になるが、まあいい。よろしく頼むぞ」
「ああ」


 

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