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22話 – オラフ王の焚刑祭(2)

  • 2016.01.23
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 

明け方。雨も止み、私達はソリチュードへの帰路についた。

「この詩歌集で、エリシフ首長を説得できたらいいけどな。まあ、校長のことだから上手くやるとは思うが」
「14日の祭の日に間に合いそうで良かったです」
「そうだな。晩餐会から戻って来たら一緒に見に行こう」
「ええ」

しばらく街道を歩いていると、急にロードが立ち止まって剣を抜いた。


「…メルヴィナ。下がっていろ」
「え?」
草むらから姿を見せた人影は、敵意を持って武器を取り出した。

「朝っぱらから堂々と暗殺稼業か? 闇の一党!」
「死んで欲しいのはそっちの女だ。邪魔をするとお前も死ぬぞ」
「やってみろ!」


ロードは自分から敵に向かっていくと、両手剣で敵を切り伏せた。

「…ロード、闇の一党とは?」
「暗殺集団だよ。頼まれれば誰でも殺す。それにしても…どういうことだ? 君が闇の一党に狙われているなんて」
暗殺者の懐からメモが出てきた。


”――黒き聖餐は行われた。誰かがこの哀れな者の死を望んでいる”

そのメモには確かに自分の名前が書かれていた。
「私が闇の一党から…。何故でしょう、人から恨みを買われるほど人と接してはいないと思うのですが…」
「少なくとも、君の存在を疎ましく思う人間がどこかにいるって事だろ。…厄介だな。またどこで君の命を狙ってやってくるか分からない。今みたいに正面から向かってくる間抜けな暗殺者とは限らない。気をつけてくれ」
「そうですね、用心します」


昼前にソリチュードへ着き、そのまま吟遊詩人大学へ向かった。


「おお、これはまさしくオラフ王の詩歌集! 正直なところ、見つかるとは思っていなかった」
「校長…。まさか、あてずっぽうで指示したんじゃありませんよね」
「む、いやいや。ジラウドはそこにあると言ったのだ、私も信じていたよ。コホン、さあ、見てみよう…」


「おお、弱ったな。これではまるでダメだ」
「校長、何か問題でも?」
「この写しは不完全で、ところどころ判読できないほど古びている。判読できる部分は…さて…吟遊詩人の詩歌は太古から大きく発展してきたからな」
「つまり…」
「宮廷で読み上げられないという事だ。詩歌がなければ、エリシフにオラフ王の焚刑祭の重要性を分からせる事ができない」
「そうですか…。この際ですから、その判読できない部分を作り上げてしまってはどうでしょう?」
「作り出す? 面白いことを言うな。適切とは思えないが…他に方法もないか。やってみよう」

ヴィアルモ校長とロードは、二人で詩歌の空白部分をどう埋め合わせるか長時間話し合い、ようやく纏めることができたようだ。
「…よし、最後に数行あるが、それを加えるだけでよいだろう」
「なんとかなるものですね」
「直ちに宮廷へ行き、これを見せよう。ロードライト、一緒に来てくれ」
「分かりました」

「メルヴィナ、君も来るか?」
「いいえ、私はこの件に関しては部外者ですので。ここで待っていますね」
「そうか、分かった。まあ、大学内なら安全だろう。待っていてくれ」
「行ってらっしゃい」

大学の食堂でロードの帰りを待っていると、一人の男性が近づいてきた。


「あんた、ロードライトと一緒に居た人だな。ひょっとしてあいつの恋人か?」
ルーシスに言われたとおり、身分を適当にごまかすことにした。
「はい、そうですが。あなたは?」
「俺はジョーン。あいつが大学にいた頃からここにいるんだ。あいつ、元気でやってるみたいだな」
「ええ」
「たまに街ですれ違っても笑顔もなく目を合わせるくらいだったが…。やっと、見付けたんだな」
「?」
「ああ、悪い。こっちの話だ。…あいつ、リュートを弾くようにはなったか?」
「いえ。残念ながら、彼が楽器を手に取ることはもう無いのかもしれません」
「そう、か…」
残念そうな顔をして、ジョーンは向こうのテーブルへ行った。

それからしばらくすると、ロードが戻ってきた。


「メルヴィナ、うまくいったぞ。祭は再開する、しかも明日開催するそうだ」
「随分急ですね。祭までまだ一週間以上ありますのに。けれど、良かったです」


「よお、ロードライト。久しぶりだな」
ジョーンがロードに声を掛けた。
「…ジョーン。こうして話すのは何年ぶりだろうか」
「元気そうだな、大学にいた頃より随分逞しくなったもんだ。祭の再開が決まったってな、みんなに準備するよう伝えるよ。…お前のおかげだ、ありがとう」
「いや、礼なら彼女に言ってくれ。祭が禁止されたと聞いて、何とかしたいと言ったのは彼女だから」
「そうだったのか。あんたもありがとうな」
ジョーンはこちらを見て頭を下げる。私も同じように頭を下げた。
「ん? 彼女のこと知ってるのか?」
「さっき少しな。良い彼女じゃないか、大事にしてやりなよ」
「え? あ、ああ…」
「明日の夕暮れに祭がスタートする。必ず観に来てくれよな。さてと、早速準備にとりかかるとするか、それじゃあな。おい、みんな。中断していた祭の準備の再開だ! 明日に間に合わせるぞ」
周りの人に声を掛けながらジョーンは去っていった。

私達は死者の安息所での戦いの疲れもあってか、早々に宿に戻って休むことにした。


 

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