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15話 – 創始者の角笛(2)

  • 2015.11.24
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


ヘルゲンでの処刑寸前の光景を再び夢に見たせいか、随分早く目が覚めてしまった。
何もしないのは退屈、けれどもう一度眠るには中途半端。部屋に置いてあった本を手にとって見る。
『アルドゥインはほんもの』
子供が書いたのかと思うような文章で読み辛さもあったが、時間つぶしにちょうどいいとその本を読んだ。

”アカトシュとアルドゥインは同一の存在と帝国の人間は言うが、事実は別の存在である。
アルドゥインは手下のドラゴンを引き連れて、スカイリム全土を支配しようとした悪いドラゴンなのだ。だが勇敢な英雄達によって倒された。”

(アルドゥイン…)
ヘルゲンで見たあの黒いドラゴン。あれがアルドゥイン…?
著者が記したアルドゥインの物語は古くから伝えられていたようだ。昔、英雄に倒されたアルドゥインが、この時代に復活したのだとしたら。
考えられないことではなかった。

「おはよう、メル。今日は早いな」
ルーシスから声を掛けられるまで、近くに人がいることにも気付かなかった。
「あ、おはようございます。ごめんなさい、気付かなくて」
「随分と熱心に本を読んでいたな」
「ええ。なんだか他人事とは思えない内容でして…」
「ほう。どれどれ、『アルドゥインはほんもの』…子供向けの本か?」
ルーシスは本を受け取るとペラペラとめくった。
「…なるほど。アルドゥイン関連の本なら以前読んだぞ。その本ではアルドゥインとアカトシュを同一視していたが…こちらの本が私の考えと近いな。お前もここに書かれていることが気になるのだろう?」
「はい。ヘルゲンで見た黒いドラゴンはアルドゥインで、復活してしまったのだろうかと」
「そして、ドラゴンボーンの目覚め。間違いないだろうな」
「やはりそうですよね…」

自分はドラゴンボーンとして鍛錬する覚悟がようやく決まりつつあるところで、まだ未熟にもほどがある。
そんな自分の目の前にアルドゥインが現れたとして、一体何が出来るのだろう…。
「私は、もっと頑張らなければなりませんね」
ルーシスが静かに頷いた。

ロードとリディアが起きてきたところで、朝食をとって出発の準備をする。
「ロード、昨日鎧を見に行ったんじゃなかったのか?」
「ああ。新しい鎧の調整を頼んでおいたんだよ。朝ホワイトランを発つときに受け取る予定だ」
「それは楽しみだ」
ロードはルーシスといつもどおりに会話している。安心したと同時に、彼のことを気にしていた自分に少し驚いた。

先に行って鎧を受け取ると言ってロードが宿屋を出た。
私達も食料を買い込んで準備を済ませた後出発した。

鍛冶屋「戦乙女の炉」に行くと、彼は新しい鎧を身に着けて待っていた。


その格好にリディアが吃驚する。
「あの…。さ、寒くないかしら? お腹…」


確かに、予想外の思い切った装備だった。
「ん? おかしいか? これ、動きやすくていいと思ったんだが…」
「ロードはノルドだ、腹出しくらいなんてことないんだろう? 似合ってるじゃないか、私はそのセンス好きだぞ」
「いえ、でも…いくらなんでも。あなたはもっと堅実な感じの防具を好むと思っていたんだけど、意外ね」
真顔で二人の会話を聞くロードの姿が妙におかしくて、つい吹き出してしまった。
「フフッ…。私も、似合っていると思いますよ。素敵な鎧ですね」
「従士様まで…。ロード、お腹はしっかり守りなさいね。壊すわよ」
「…そっちの心配か」


歩きながら、ロードとルーシスがこれからの進行ルートを話し合う。
「ルーシス。モーサルへはどう行く?」
「今回も近道しようかと思う。まともな街道はドーンスター方面かロリクステッド方面しかないのだが、どちらも大回りになるからな」
「まさかラビリンシアンを突っ切るのか? あそこはフロストトロールの生息地だぞ」
「なに、この人数なら例によってなんら問題ないだろう。お前もあの遺跡へ行ったことがあるのだな?」
「ああ。ホワイトランからソリチュードへ戻るときはあそこを通るのが早いからな。遺跡の内部へ入ったことはないが」
「私もそれはないな。一度は入ってみたい巨大遺跡だ」


「ルーシスは色々なところを旅しているのですか? 地理に詳しいですよね」
「そうだな、スカイリムで行ったことのない街はないな。趣味で一人旅をすることもあるし、任務で旅をすることもある」
「私も記憶を失う前は旅をしたりしたのでしょうか」
「ウィンターホールドの大学にはお前一人で行ったこともあるぞ。あとは、そうだな…何度かソリチュードへは一緒に行ったな」
「そうなのですか。私一人でウィンターホールドまで…よく行けましたね」
「あの頃のお前は魔法もしっかりと習得していたからな。シャウトと並行して魔法の鍛錬もしなければいけないぞ。大変だ」
記憶さえ戻ればな、とルーシスは付け足した。

記憶を取り戻したい。その思いはずっと変わらない。
けれど…記憶を取り戻して本当の自分に戻ったところで、今の”私”はどうなってしまうのだろう…。


しばらく道なき道を歩くと、目の前に巨大な遺跡群が広がった。
「ここが、ラビリンシアンですか。墓地…ではなさそうですね。古い都市でしょうか」
「大昔の遺跡だな。元々はブロムジュナールという大都市で、ドラゴンを崇拝する竜教団の本拠地でもあった。まあ、今のお前には関係のない場所だ。さっさと通過しよう」
警戒しながら遺跡を進むと、案の定フロストトロールがこちらに気付いて襲い掛かってきた。

三人が一体を相手にするのだから、当然フロストトロールもあっけなく倒れた。
横から炎の魔法で援護したつもりが無駄だったようだ。


こんな調子で、出現したフロストトロール計三体を軽く倒し、ラビリンシアンを抜けた。

モーサルに着いたころにはもう日が落ちていた。
街の入り口付近で、住民が集まってなにやら揉めている。どうも首長への不満を爆発させているようだ。話が終わり住民が帰っていく様子を眺めていると、ルーシスが広間のほうへ歩き出す。
「穏やかじゃないな…久しぶりにばあさんに会っていくか。メル達は先に宿屋へ行ってな」
「え? ルーシス」
「ここモーサルの首長イドグロッドとは旧知の仲なのだ。心配するな」
ルーシスはそう言って首長の居るハイムーン広間に入っていった。


宿屋へ向かおうとするところをリディアが呼び止めた。
「従士様、お疲れでしょう。私は武器の手入れをしていきますので、先に宿でお休みください」
彼女はそう言って鍛冶屋のほうへ歩いていった。

「では、行きましょうか――」
ロードの名前を呼びかけて止まった。

今日は彼と会話していないことに気付いた。もしかすると、昨日のことが原因で口をきいてくれないのだろうか…。
「ロード。あの…」


「どうした?」
振り返ってこちらを見るロードはいつもと変わらない。思い過ごしだったのだろうか。
「いえ、何でもありません。行きましょう」

ふと空を見上げると、大きな月が見えた。
「大きな月ですね…」
そう呟くと、ロードも空を見上げた。
「見たことあるだろう? …三日月か。それにしても今夜は明るいな」
「え、あ…そうですね。見たことあります。何、当たり前のこと言ってるのでしょうね…。もう、どこからどこまで記憶がないのかよく分からなくなってきました」
照れ隠しに笑いながら俯く。


「…メルヴィナ」
顔を上げると、ロードは穏やかな表情で私を見ていた。
「ルーシスは君の記憶を早く取り戻したいと思っている。それは君も同じだろう。でも、焦らなくていい。記憶なんて、何がきっかけで戻るのか誰にも分からないんだからな。忘れてしまった魔法は、また覚えていけばいいさ。元々素養のある君なら問題ないだろう?」
「ロード…ありがとう、ございます…」

彼の言葉はまるで気持ちを見透かしたように、記憶を戻そうと焦っていた私の心に深く沁みた。


 

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