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12話 – 隠匿の炉床墓地(1)

  • 2015.11.15
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 

目が覚めて身体を起こす。いつもと変わらない朝だった。自分の身体に何か変化があるわけでもなく…。

ルーシスとロードは既に起きて朝食をとっていた。
「おはよう、メル。よく眠れたか?」
「おはようございます。ええ、ぐっすり眠れました」
「早速だが、ロードも一緒に旅をしてくれるそうだ」
「本当なんですか? でも、お仕事もあるのでは…いいのですか?」
「君さえ良ければ。昨夜ルーシスと話して決めたんだ。乗りかかった船だからな、とことん付き合うよ」
「ありがとうございます、嬉しいです! どうぞよろしくお願いします」
そう言うとロードは微笑んだ。

朝食を終えると、ルーシスが思い出したように切り出した。
「メル。そのローブもいい加減ボロボロになっていないか? 着の身着のままじゃドラゴンボーンとして格好がつかないぞ」
気にしていなかったが、そういえばずっとこの服を着ている。袖の部分が擦れて所々ほつれている。
「お前の服ならそこのクローゼットにたくさんあるから好きなものを着るといい」
「ありがとうございます。見てみますね」

「わあ…素敵な服がたくさん。目移りしてしまいますね…。あ、これにしようかしら」
迷った末、一着を手に取った。


「…メ、メルヴィナ!?」
「おい、メル。ちょっと待て」
着替え始めたところでルーシスが止める。
「はい、どうかしましたか?」


「待て…待て待て! こっちへ来るんじゃないっ!」
「えっ??」
「ここでは駄目だ、向こうで隠れて着替えてくるんだ!」
ルーシスが慌てた様子で通路の向こうを指差す。ロードは顔を背けている。何かしてしまったのだろうか。
「あ…ごめんなさい。向こうへ行ってきます」

壁に隠れて急いで着替えてから二人のところへ戻った。


「ごめんなさい。私、何か失礼なことをしてしまいましたか?」
「失礼というか…人の前で、特に男の前で肌を見せるなと教えただろう? 忘れたのか」
「そうなのですか。憶えていません…」
「では今すぐに覚えてくれ。絶対に忘れるな、いいか?」
口調は穏やかだが、ルーシスが怒っていることはその表情から感じ取れた。
「はい、ごめんなさい…」

支度を整えて、早めに下山した。
「ルーシス、ウステングラブの場所は分かりますか?」
「ああ。ここからずっと北西にある。モーサルの近くだそうだ」
「モーサルか…割と遠いな。イヴァルステッドからどう行く?」
ロードが質問する。
「ホワイトラン経由で進もうかと。お前は帝国軍人だからな、ウインドヘルム経由は避けたいだろう?」
「そうだな。まあ、帝国軍の鎧でも着てなきゃ分からないと思うが」
「それもそうか。しかし意外だぞ、ウインドヘルムには絶対に行かん! と言うかと思った」
ルーシスがそう言うとロードは苦笑しながら答える。
「俺は確かに帝国軍所属だが、何故ストームクロークが蜂起したのか多少理解できる部分もあるんだ。スカイリムのノルドにとって、タロス崇拝の禁止は種族を否定されたも同じようなものだろうからな。…まあ、ウインドヘルムに用があっても拒否はしないよ。当然身分は隠すけど」
「ほう、随分と穏健派なんだな」
「同じ種族で争うのが馬鹿馬鹿しいと思うだけさ…」

しばらく歩いていると大きな唸り声が聞こえた。


「ドラゴン…!」
こちらに気付く様子もなく山中へ飛んでいくのを見つめた。
「やはり復活しているのですね…一体どこからドラゴンは現れるのでしょう…」
「分からんな…。問題は、奴らに知能があるのかどうかだ。ただ人を襲うだけのものなのか、それとも…」
「私がホワイトランで出会ったドラゴンは人の言葉を話しました」
「そうなのか? 何と言っていた」
「私を見てドヴァーキンと呼びました。そのときは何のことだか分かりませんでしたが…ドラゴンには私がドラゴンボーンだと分かる何かがあるのでしょうか」
同族は竜の力を吸収する…。アーンゲールの言っていたことを思い出した。

もしも自分が、人の形をしたドラゴンなのだとしたら…。そんな考えが過り、慌てて首を振った。


イヴァルステッドに到着すると、リディアが出迎えてくれた。
「従士様。お疲れ様でした、ご無事で何よりです」
「リディアも墓地の調査お疲れ様です。問題ありませんでしたか?」
「ええ。詳しい報告は後ほど…。お疲れでしょう、宿に戻ってお休みになってください」
「そうですね」


「――というわけです」
リディアが墓地の調査での出来事を話した。
「案外簡単な調査だったな」
ロードが言うと、リディアは机の上に見覚えのある形のものを置いた。
「宿の主人のウィルヘルムから礼だと言われて受け取ったのだけど、これ何かしらね?」
「あ、これは…」
「ブリーク・フォール墓地のあの金の爪と同じ形だな…。リディア、墓地の奥に仕掛け扉とかなかったか?」
「ああ…絵が描かれた扉ならあったわよ。開きそうもないから引き返したけれど」
ロードと二人で顔を見合わせた。
「これはその扉の鍵だろうな」
「そうですね。もしかすると、その墓地の扉の向こうにはブリーク・フォール墓地で見たあの壁があるかもしれません」
「壁?」
ルーシスが訊く。
「ええ、墓地の奥に声が聞こえてくる壁があって…。そこでシャウトを一つ覚えたのです」
「それ…言葉の壁じゃないか? 壁に文字のようなものが書いてあっただろう?」
「はい。言葉の壁…ですか?」
「そうだ。私もアーンゲールに聞かされたことがあるくらいで、実際に目にしたことはないが…。そうか、ドラゴンボーンのお前だから言葉の壁は反応したのだろう」


「ふむ、興味があるな…。よし、今からその墓地に出発しよう。リディア、その場所まで案内してくれ」
「ええ、それは構いませんが…。従士様がお疲れでは?」
「なに、この人数なら今から行っても夜には帰ってこられる。メルは後ろから付いて来るだけでいい」
ロードとリディアは渋っていたが、ルーシスの勢いに押されて急遽墓地へ向かうことになった。


墓地の奥には見たことのある扉。仕掛けの解き方も同じだった。
「さて、ここからが本番だな。気を引き締めていこう。二人とも頼りにしてるぞ」
ルーシスがそう言って先に進むと、ロードとリディアの二人はやれやれといった感じで後に続いた。
だがそんな二人も、奥へ進みスケルトンやドラウグルに遭遇すると顔つきが変わった。


「仕掛けですね。これには見覚えがあります。どこかに答えが隠されているはず…この石柱の絵を正しく合わせて、このスイッチに乗ると橋が下りてくるのでしょう」


「メルヴィナ、こっちのスイッチは何だ?」
隣の部屋を見てみると、ロードの足元にもスイッチがある。あたりをじっと見回すと不自然な形をした壁があった。
「ロード、それに乗ってみて下さい。罠ではないので大丈夫です」
「ん、そうか? よし…っと」
ロードがスイッチの上に乗ると、思惑通り壁が動いてその向こうに石版の絵が見えた。
「なるほど…古代ノルドも考えるな」
ルーシスが感心した。


王の墓だろうか、一際広い場所に出た。
いくつか棺が置かれている。
「これは出るな…。メルヴィナ、下がってろ」
ロードがそう言って剣を構えるとゆっくりと奥へ進む。ルーシスとリディアも続く。
目の前の棺が開き、ドラウグルが体を起こした。
「ロードは正面、私は右を行く。リディアは左を頼んだぞ!」
ルーシスが指示を出し、三人は散らばって各自ドラウグルと戦う。
ルーシスとリディアが両脇で弓を構えている敵を片付けている間に、ロードは複数のドラウグルを相手にしていた。
ルーシスの指示は的確だったのだろう。ロードの両手剣は複数の敵をなぎ払い、寄せ付けようとしなかった。
あらかた倒し終わると、壇上の大きな棺から最後の一体が現れた。

「ふう…終わったか。メル、怪我は?」
「いえ、なんともありません。三人とも大丈夫ですか?」
全員怪我一つ負っていなかった。
「だから言ったろう? この人数なら問題ないと」
ルーシスが笑う。


あの時と同じ、声が身体に流れてくる。

“Kaan”――言葉は声となって頭の中に響き渡った。

「HET NOK KOPRaaN DO HELA
FahDON Wah Pah SIVaaS
aaR DO KaaN aaL REK SiiV UNahZaaL
PRaaN KO FeyKRO DO HahNU…」

気が付けば壁に書かれた文字を自然に読んでいた。

「驚いた、メルはこの文字が読めるのか」
ルーシスが壁に手を当てながらこちらを見る。
「私にも…何故読めたのか分かりません。言葉の意味も分からないのに…」
「そうなのか。それで、なにかシャウトを覚えたのだな?」
「はい。ですが…私の力不足なのでしょう。その言葉を”声”に出そうとしても出ないのです」
「不思議だな。いずれ時が来ればその理由も分かるかもしれない。今は胸にしまっておけばいい」
「そうですね…」
「さて、用も済んだ。早く戻って寝るとしよう」

宿に戻ると、リディアが食事の用意をしてくれた。
「リディア、それは何ですか? いい匂い…」
「鶏肉と野菜のスープです。従士様、お疲れでしょう? 私が食事のご用意をさせて頂きますのでゆっくりと休んでくださいね」
「いえ、私なんてずっと皆さんの後ろを歩いていただけなので…」
「遠慮なさらず。食べ物の好き嫌いはございませんか?」
「ええ、何でも食べられます。ありがとう、リディア」


「それにしても、本当に美味しそう…。お腹が空いてきました」


「フフ。従士様もそうやって笑うと普通の女性ですね。ドラゴンボーンなんて神話の存在にはとても…いえ、失礼しました」
「いいえ。気にしないで下さい。…ありがとう」
普通の女性。その言葉がなんだかとても嬉しかった。


 

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