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09話 – 声の道(3)

  • 2015.09.25
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


少し痛い頭を押さえながら起きる。テーブルには既に身支度を整えたロードとリディアが集まっていた。
「従士様、おはようございます。昨晩は失態をお見せしてしまったようで…おまけに従士様にもご迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「おはようございます。いえ、とても楽しかったので少し無茶をしてしまいました。リディアが気にすることではありませんよ」
「いえ、ですが…」
「メルヴィナもこう言ってるんだからもういいだろう。ただし、次からは自重しろよ」

朝食を終え、リバーウッドを後にした。

しばらく歩くとヘルゲンが見えてきた。あの惨状をもう一度見るのは辛いが、仕方ない。
「ハドバルの話じゃあ、崩壊したヘルゲンに山賊が巣食っているらしいな。気をつけろよ」
「…ヘルゲンには入らず、脇を通り抜けられませんか?」
「砦には入らず、ということか。壁伝いに行けば何とかなりそうだけど、どうした?」
「無用な戦いを避けたい、ということもあるのですが…ここには良い思い出がありませんので」
「そうか…。じゃあ、敵に見つからぬよう慎重に進もう」
「ありがとうございます、お願いします」
砦と岩山の隙間を壁伝いに進み、なんとかヘルゲンを抜けた。


「ロード、珍しいわね。心境の変化でもあったのかしら」
リディアがロードを見る。
「ん? 何だ急に」
「あなた、わざわざ山賊を探して殺す。というくらい賊嫌いと聞いていたけど」
「誰から聞いた」
「ハドバル。ねえ、ヘルゲンの山賊は退治しなくて良かったの?」
「…今回は彼女もいるだろ。危険は冒したくない」
「それもそうね」

以前気になっていたこと。ロードはやはり山賊や盗賊に人一倍憎しみを持っているのだと確信した。
その理由は…聞かないほうがいいのかもしれない。聞いたところで、話してはくれないだろう。

休憩を挟みながら道なりに進むと、景色が変化してきた。


敵も狼くらいしか出なかったおかげで思ったより早くイヴァルステッドに到着した。
まだ明るいが、宿を取って明日の早朝に七千階段を登ることに決めた。


「今夜はしっかり食べて、明日の山登りに備えないとな。まったく、今朝言ったのにもうあれだよ」
カウンターで酒を飲みながら店主と話しているリディアを指差しながら、二人で笑う。
「リディアは余程お酒が好きなんですね、さすがに今夜はほどほどにしてくれると思いますけど…。あ、これおいしそうですね。いただきます」
大皿から料理を取って食べつつ、喉が渇いたのでカップに水を注ごうとした。
「メルヴィナ、それワインだぞ」
「え? あっ、本当。水のつもりでした…」
「水はこっち。ほら、それは俺が飲んでおくから」
笑いあいながら食事をしていると突然大きな声で呼ばれた。


「メル!!」
驚いて振り返ると、男性がこちらを見ている。

 


「メル…。やはりメルヴィナだな? 戻ってきたか」
「え、あの…あなたは?」
その男性は答えるより先に私を抱き寄せた。


「まったく、突然姿を消して…。ずっと捜していたのだからな。無事で本当に良かった…」
「…私を、知っているのですか?」
「何を言っている? 当たり前だろう。私はずっとお前と一緒にいたではないか、忘れたのか」
「はい、忘れているのです…。過去の記憶すべて…」
「なんだと? どういうことだ?」
「彼女は記憶を無くしている。…メルヴィナの知り合いか?」
ロードが割って入ってきた。


ルーシスと名乗るその男性に、自分が記憶喪失だということを説明した。

「そうだったのか…それは災難だったな。けれどこうして再会できたのだ、まずは祝おう!」
「ルーシスと言ったな。随分暢気なんだな」


「ハハハ、そう言うな。これでも心配して夜も朝方までしか寝られなかったのだぞ」
「十分寝てるじゃないか…」
呆れ顔のロードにルーシスは笑う。

「実はな、メル。お前がそろそろ戻ってくることは分かっていたのだ。アーンゲールに言われてこの村で待っていた」
「え? それはどういう…」
「お前、ドラゴンボーンの力に目覚めたろう? ハイ・フロスガーから呼び出したのが、そのアーンゲールだ。必ず戻ってくると言っていた」
「私…やはりそこに行った事があるのですね」
「何を言う、お前はそこで育ったんじゃないか。ちなみに私がお前を育てたのだからな」


「…それで、彼女はどうして突然姿を消したんだ? 心当たりはないのか?」
「分からん」
「分からん…って。あんた、彼女の面倒を見ていたんだろう?」
「私もずっとハイ・フロスガーにいるわけではないのでな。見ての通り、ちょっとした特殊任務を受けたりもする。メルが姿を消したのは私の留守中だ」
「その鎧、サルモールか…?」
「当たらずといえども遠からず、まあそういうことにしておこう。それで、どうして姿を消したのだ、メル?」
「私が知りたいくらいです…」
「そうか。では、ハイ・フロスガーでアーンゲールに聞いてみるとしよう」
ルーシスはロードを見た。
「まだ名前を聞いていなかったな」
「俺か? ロードだ」
「彼が記憶を無くした私を助けて、ここまで一緒に付き合ってくれたのです」
「ロード。…以前どこかで会わなかったか?」
「…? 初対面だと思うが」
「そうか、気のせいかな。メルヴィナを無事に届けてくれたこと、感謝する。しかし…ノルドだろう? 随分と背が高いな」
「…気にしてるんだ、言わないでくれ」
「おっと、それは失礼。私はブレトンだが…どうして身長はアルトマーの父に似なかったのかそれがコンプレックスでな。そうか…身長が高すぎてもコンプレックスになり得るというわけか、勉強になった」
「それは…どうも。あんたもそこまで背が低いとは思わないけどな、ブレトンにしては…」
ロードは風に当たってくると言って外に出て行った。


二人になったところで、ルーシスはじっと私を見つめた。
「メル」
「?」
「会いたかった…本当に」
「あの…私、ごめんなさい」
「分かってる、私のことも全て忘れてしまったんだな。…いつか思い出してくれればそれで良い。今は、それだけ伝えておくとしよう」
彼はそう言って少し寂しそうに笑った。

ルーシスと会話した後、風に当たりに外へ出ると、ロードは夜空を眺めていた。
「ロード。気分でも悪いのですか?」
「ん? いや、別に。ルーシスはいいのか?」
「ええ、どう接したらいいのか分からなくて…」


「君を知っている人に会っても、記憶は戻らず?」
「そうですね…きっと大切な人だったのだろうと思いますが。残念ながら」
「恋人なのかもな」
「恋人ですか? よく分かりません…」
「…なあ、メルヴィナ。俺は…まだ必要か?」
「え??」
「君の事を良く知っている彼に会えたんだ。それに私兵のリディアもいる。護衛がそんなにゾロゾロといても困るだろう?」
「ロード…」


「勿論、ハイ・フロスガーまでは責任を持って同行するよ。俺も七千階段を上ってみたいってのもあるけど。そこで君達とは別れようと思う」
「そう…ですか。残念ですが、あなたをいつまでも引き止めるわけにはいきませんものね…分かりました。あと少し、よろしくお願いしますね」
寂しさを隠して俯いているとロードが小さく呟いた。
「……おかしなものだな。出会ってまだ数日なのに…」
「…?」
「なんでもない。明日も早いんだ、もう休もう」

宿に戻って、リディアのほうを見る。まだ飲んでいるようだ。
「リディア、大丈夫ですかね…」
「しょうがないな、まったく」

「おい、リディア。そのくらいにしときなよ」
「あら、今夜はそれほど飲んでないわよ」
確かに昨晩より意識はしっかりしている。
「従士様。実は、こちらの宿の主人から墓地の調査を依頼されまして。困っているようなので受けようかと思うのですが、まずは従士様にご相談をしなければと」
「墓地の調査ですか…」
「明日ハイ・フロスガーに出発するんだ。後回しに出来ないか?」
「それなんだけど、調査は私一人で行うから、あなた達だけでハイ・フロスガーへ向かってもらえないかしら。ほら、あそこの彼もいるのだし」
リディアが離れた場所にいるルーシスに視線を送る。
「従士様のお知り合いなんでしょう? 彼とあなたの二人いれば十分よ。従士様、よろしいですか?」
「リディアがそう言うのなら構いませんが…一人で大丈夫ですか?」
「ええ、問題ありません。こういう任務には慣れてますからね」
「そうですか、ではくれぐれもお気をつけて」
「はい。従士様も」


 

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