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07話 – 声の道(1)

  • 2015.09.11
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


随分眠ってしまったようだ。窓から差し込む光で目が覚めた。
身支度をして下に降り、フルダに挨拶をする。
「おはようございます」
「あら、おはよう。あなたにお連れさんから伝言よ。昼くらいにドラゴンズリーチに来てくれって言っていたわ。さ、食事の用意も出来てるから食べていきなさい」
「そうですか、ありがとうございます」
もうすぐ昼だ。食事を済ませてドラゴンズリーチへ向かった。

途中すれ違う衛兵から視線を感じる。どうやら昨日の出来事がもう広まっているようだ。直接、ドラゴンボーンなのかと聞いてきた衛兵もいた。好奇の目で見られながら、足早に宮殿に入った。
「よし、やっと来たな。首長がお待ちかねだ」
執政のプロベンタスに連れられて首長に会う。
「さあ、監視塔での出来事を報告してもらおうか。あそこで何があった? ドラゴンはどうなったのだ?」
「監視塔は破壊されてしまいましたが、ドラゴンは倒すことが出来ました…その…」
「イリレスが頼りになることは分かっていた。だがそれ以上の出来事が起こったのだろう?」
「はい…。どうも、私は“ドラゴンボーン”と呼ばれる存在らしいです」
「ドラゴンボーン? ドラゴンボーンについて何を知っているんだ?」
「私自身、昨日のあの瞬間まで知らなかったのですが…ドラゴンが死んだとき、何らかの力を吸収したようです」
「では本当なんだな、グレイビアードがお前を呼び出していたのは」
「グレイビアード?」
「声の使い方の達人だ。世界のノドの絶壁高く、人里離れた場所に住んでいる」
「やはり…あの声は山の上からでしたか…。その、グレイビアードはどうして私を呼んだのでしょうか?」
「ドラゴンボーンは声に独特の才能があると言われている。生命活動の最も重要な部分をスゥーム、つまり“シャウト”に集中させる能力だ。本当にお前がドラゴンボーンなら、その才能の使い方を彼らから教わるといい」


「ドラゴンを殺したとき、何が起こったにせよ、それがお前の中の何かを現した。そしてグレイビアードがそれを聞いた。今すぐハイ・フロスガーに行ったほうがいい。グレイビアードの召喚を拒絶することはできない。これは非常な名誉だからな」
「はい、私もそう考えていました。グレイビアードとお会いすれば、ドラゴンボーンのことや…自分自身のことも何か掴めそうな気がします」
「そうだな、そうしたほうがいい。俺ももう一度あの七千階段を上れたらな…うらやましいよ」
「七千、階段…ですか」
少し顔が引きつった。確かに、あの山のてっぺんまで行かなければならないのだからそのくらいはするだろう。首長はそんな私の引きつった表情を見て笑った。
「ハハハ。何とかなるだろう。しっかりと備えて臨めばどうと言う事はないだろう。君は一人ではないしな」
「え?」
「私だけではなく街に対しても大いに貢献してくれた、ドラゴンボーンよ。首長としての権利により、君をホワイトランの従士に任命する。私に与えることが許されている中で、これは最高の名誉だ」
「ええ? 私が従士に、ですか? …あの、私、正直そこまでの活躍をしたわけでもないのに恐れ多いです…」
「いや、お前の力があったからこそドラゴンを倒せたのだ。遠慮せず受けてくれ。そして、リディアを私兵に任命する。心強い仲間となるだろう。それと…」

首長と話し終わり、宮殿の出口へ行くと二人が私を待っていた。


「初めまして。首長が私兵に私を任命しました。お仕えできて光栄です、従士様」
「あなたがリディアですね? 宜しくお願いします」


「メルヴィナ、俺も同行することになった。これからもよろしくな」
「ロード。ありがとうございます、宜しくお願いします」

心強い旅の仲間が増えた。


まだ日も高いので、今日中にリバーウッドに向かい、一泊したのちヘルゲンを通ってハイ・フロスガーのふもとにあるイヴァルステッドを目指すことにした。
「従士様、無理はなさらないでくださいね。ゆっくり確実に進みましょう」
「重い荷物はこっちに預けてくれればいい。そのために俺達がいるんだからな」
「あの…二人ともありがとうございます。足を引っ張らないように気をつけますので、道中宜しくお願いします」
ホワイトランの店を巡り、長距離の旅に備えて薬や食料を買い込んだ。

「あの…ロードとリディアはお知り合いですか?」
隣を歩くリディアに聞く。
「そうですね。ソリチュードへ行った時に彼と何度か会っています。話すことはそれほどありませんでしたが」
私達の後ろを歩くロードをちらりと見た。そういえば、彼の出自を聞いたことがなかったことに気付いた。
「ロードは、ソリチュードの出身なのですか?」
「ん? いや、元々はシロディールの出だよ。スカイリムに来てから十年位かな」
「あら、そうだったの。私はてっきりハドバルと同郷だと思ったわ」
「同時期に帝国軍に入ったからな、ウマが合ったんだ。リディアはハドバルと仲良かったよな」
「あの人、私が同じ剣技を習得してるから張り合っちゃってるのよ。会うたびに剣の話と、仕留めた山賊の数自慢ばかり。彼、今でもソリチュードで元気にやってる?」
「今はリバーウッドで警備についてるよ。今夜会えると思うが」
「そうなの。久々に彼の自慢話を聞かされるわけね…」
二人の楽しげな会話を聞きながら、道中ずっと微笑んでいた。

そんな和気藹々とした空気を壊す者が現れた。追いはぎだ。当然一番弱そうに見える私に近づく。


「さあ、金目のものを出しな、さもなきゃ…」
言い終わらないうちに二人が剣を鞘から抜く音がした。


「従士様! 下がって」
リディアが剣を当てて、追いはぎの手からナイフを落とした。そしてすぐさまロードが後ろから斜めに切りつける。

「二人とも、さすがですね…」
と、同時に容赦のなさに驚いた。放っておけばまた狙われる。殺さなければこちらが死ぬ。二人の行動は当然といえば当然だけれど。
「このくらいは問題ありません、お怪我はありませんか?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「…人に危害を加える暇があったら、薪割りでもしたほうが稼げるだろ。馬鹿だよな…」
息絶えた追いはぎを見ながらロードが呟いた。


まだ明るいうちにリバーウッドへ到着した。今日は早めに休もうと宿へ入る。

三人でテーブルを囲み、食事も済ませて一息ついた。
「あ、ねえロード。あなた確かお酒は強かったわね?」
「まあ…そこそこには」
「景気づけに一杯やりましょうか?」
「明日も早いんだぞ、大丈夫か」
「飲んだほうがぐっすり眠れるじゃない。さあ」
リディアがロードのグラスに並々とワインを注ぐ。
「従士様も、この蜂蜜酒なんてどうですか? 甘くておいしいんですよ」
私が返事をしないうちにリディアは蜂蜜酒をグラスに注いだ。
一杯だけならいいかな、正直なところお酒は飲んだことがないけれど…。
リディアの勢いに押されて一口飲んだ。
「あ。おいしい…」
「でしょう? キンキンに冷えた蜂蜜酒って最高なのよね」
酒が入ったからか、リディアの口調がくだけてきた。

しばらく三人で酒を飲んでいると、ハドバルがやってきた。


「楽しそうじゃないか。やあ、リディア。久しぶりだな、元気か?」
「んん? よく見たらハドバルじゃない。どうしてここにいるのよぉ」
「そりゃこっちのセリフだ」
「私はこちらの従士様にお仕えしているのよ。フフ、これは大変光栄なことなのよ。羨ましいでしょ、ハドバル」


「従士様? メルヴィナ、お前随分と出世したんだなあ」
「おいハドバル、リディアを何とかしてくれ。こんなに絡み酒とは思わなかった…」
「女を二人もはべらせてるんだ、いい気味だ」
「勘弁してくれ…彼女にまでしつこく酒を勧めるんだぞ。メルヴィナ、大丈夫か?」


「…スー、スー」
「寝てるな…。俺が代わりにリディアの相手をしといてやるから、ベッドまで運んでやれよ」
「頼む。…メルヴィナ、行こう」
ロードの声でなんとなく目を覚ますが、頭がくらくらして少し気分も悪い。
「うん…? あの、少し、外で身体を冷やしてきます…」
「立てるか?」
「ええ、大丈夫…」
一人で立ち上がると、ふらふらと外への扉を開けた。


「おっと」
まともに歩けなくて倒れそうになったところをロードに支えられた。
「ご…ごめんなさい。少しだけ、このままで…。ごめんなさい…」
「いや、謝る事なんてない。俺がリディアを止められなかったのが悪いんだから。本当にすまない」
どのくらいの時間、彼に抱きとめられていたのだろう。さっきよりは幾分か気分も良くなってきた。
「ロード…ありがとうございます。少し楽になりました…」
「そこのベンチに座ろう。もう少し風に当たったほうがいい」


「……」
「……」
お互い無言のまま、風に揺られる木々の音と虫の声だけを聞いている。
「ロード、ごめんなさい。あなたには、迷惑をかけてばかりで…」
「好きでしてるんだ、迷惑なんて思っちゃいないよ」
「あなたは本当に、人がいいのですね…。私、あなたと出会えて本当に良かったと思っています」
「…前にも聞いた」
「ブリーク・フォール墓地でしたね。無事に戻れたらもう一度言うと約束したでしょう? 少し間が空いてしまいましたが…」
「そうだったな」
「私ね…。正直なところ、あなたとは今日でお別れと思っていました。それで、寂しい気持ちになったのです。短い間でしたけれど、私の中ではあなたの存在が非常に大きくなっていて。記憶を無くして、頼る相手も分からず不安なときにあなたが現れてくれたから」
「メルヴィナ…。そんな思わせぶりなことを言ったら誤解を招くぞ」
「誤解って?」
「そういうことを男に言ったら、普通の男なら本気にするってこと」
「嘘は言ってませんけど…」
「…とにかく、男には軽々しくそんなこと言うなよ、変に勘違いされたら困るのは君なんだからな」
「あなたにしか言いませんけど…」
「参ったな…。君も酔ってるのか」
「そうですね、頭が少しふわふわしてます。それに少し寒くなってきました」
「それじゃあ中に入ろう、ベッドに入ってしっかり温めて寝るんだぞ」
「はい」

そのままロードに連れられてベッドに寝かされ、私はあっという間に眠ってしまった。


 

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