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06話 – ドラゴンの目覚め

  • 2015.09.05
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


馬車に揺られながら、ホワイトランまで少しの間眠った。
到着してすぐにドラゴンズリーチのファレンガーの元へ向かうと、彼は女性と議論の最中だった。
「――首長自身がついに関心を示したのだ。これで思う存分研究に没頭できる」
「時間がないのよファレンガー。覚えておいて。架空の話をしているのではないの。ドラゴンが戻ってきたのよ」
「心配するな。生きたドラゴンを間近で見られれば実に価値ある事とは思うが…。他に見つけたものがあるので見てくれ…かなり興味深いものだ。お前の雇い主も興味を持つかも知れん…」

女性が私に気付く。
「あなたの客が来たわよ」
「ん? ああ、首長の遣いか! ブリーク・フォール墓地から戻ったのか? 死なずに済んだようだな」
「ドラゴンストーンを見つけてきました」
ファレンガーは石版を手にすると目を輝かせた。
「おお! これがドラゴンストーン! お前は首長が寄越してくるいつもの役立たずどもとは違ったな」
「ここにいる彼のおかげです。私一人では無理でした」
「まあそうだろうとは思ったが、結果さえ残せば手段はどうでもいい。ご苦労だった、お前の仕事はここで終わりだ。ここからはこちらの仕事だ、精神に関してのな。残念ながらスカイリムでは過小評価されている」
「ブリーク・フォール墓地に行ってこれを手に入れたの? やるじゃない」
ファレンガーの持つ石版を隣で見ながら女性が話す。この女性、どこかで見たような気がするのだが、思い出せない。
「ファレンガー、解読したら写しを私に送って。私はもう行くわ」

女性と入れ替わりにイリレスが駆け込んできた。
「ファレンガー、すぐに来て。近くでドラゴンが目撃されたわ。あら、あなた達も居たのね。一緒に来て」
ドラゴンと聞いて胸がざわついた。ヘルゲンを襲ったあのドラゴンだろうか。
「ドラゴン! 素晴らしい! どこで目撃された? 何をしていたのだ?」
「もう少し真剣に受け止めたほうがいいと思うけど。ドラゴンがホワイトランを襲うと決めたら、止められるかどうか分からないわ」


首長は逃げてきた衛兵の一人に事情を聞いていた。
「――ところで、君は西の監視塔から来たとイリレスに聞いたが」
「うう…その通りです。南から来るのを見ました。速かった、今まで見たこともないくらいに」
「何をしたんだ? 監視塔を攻撃しているのか?」
「いや、閣下、出てきたときには上空を回っていました。今まであれほど早く走ったことはありません…後を追ってくると思ったのです」
「そうか。よくやったぞ。ここからは俺達がやろう。兵舎に入って、何か食べて休め。それだけのことをしてくれたよ」

「イリレス、何人か衛兵を集めてくれ」
「既に中央門に集合するよう、部下に指示してあるわ」
「よし、頼んだぞ。それと、君。堅苦しい挨拶は抜きだ。もう一度手を借りたい」
首長はこちらを見る。この流れから何を言われるのかは見当が付く。


「ドラゴンと戦えと…?」
「そうだ。イリレスと一緒に行って、彼女を助けて欲しい。君はヘルゲンを生き延びた。ここに居る誰よりも、ドラゴンに関する経験があるからな」
「私が直接ドラゴンと戦うのは無理と思いますが…回復魔法でサポートをするくらいでしたら」
「そうだな、兵の手助けをしてやってくれ。君にも協力を頼めるか?」
首長はロードを見る。
「仰せのままに、閣下。私も同行してドラゴンと戦うつもりです」
「兵は一人でも多いほうがいい。よろしく頼む」

一緒に行ってドラゴンを見たいというファレンガーを首長が制止する様子を横目に見たあと、私達はイリレスとともに中央門に向かった。
中央門に集まった衛兵達をイリレスは鼓舞する。一行はオーッと声を上げると監視塔へ向けて一斉に走り出した。


監視塔はドラゴンの攻撃を受けたのだろうか、煙が上がっている。だが肝心のドラゴンの姿は見えない。
一旦岩陰に隠れると、イリレスは周りを見渡した。
「ひどい状態だけど、何があったか調べないと。たとえドラゴンがあたりに潜んでいるとしてもね」

「散開して生存者を捜して。まずは何と戦っているのかを知る必要があるわ」


塔に近づくと、中から衛兵が声を上げた。
「駄目だ! 戻れ! まだ近くにいる! ホロキとトーが、逃げようとしたときに捕まった!」
どこかで雄たけびのようなものが聞こえた。
「キナレス、助けてくれ。あいつがまたやってきた…」
ドラゴンはいつの間にか頭上にいた。
「来たわ! 隠れて、すべての矢を当てるのよ!」
イリレスが叫ぶ。衛兵が一斉に矢を射る。ドラゴンは上空を飛び回り、狙いをつけたように降り立つと兵の一人に攻撃をしかけた。

そのドラゴンはヘルゲンで見たあの黒い竜とは違っていた。
「あれがドラゴンか!」
地上に降りているドラゴンにロードが駆け寄り剣を振る。
「ブリット グラー。定命のものよ。お前たちの力を忘れていたぞ」
ドラゴンはそう言うと炎のブレスを吐いた。
「ロード!」
治癒の手を彼にかけつつ、片方の手で炎をドラゴンに当てた。
「加勢します!」


「ドヴァーキン!?」
ドラゴンはこちらを向き、何かを言ったが聞き取れない。
「メルヴィナ! 無茶をするな、下がってろ!」
ドラゴンの頭がグッと自分のほうへ伸びて来る気配を察知して、慌てて後方へ避ける。大きな口が開いて危うく丸呑みにされてしまいそうだった。
「ドラゴン! こっちだ!」
ロードは挑発するような素振りでドラゴンを引き寄せた。


衛兵も加わり、集団でドラゴンを畳み掛けるように攻撃する。
ドラゴンは反撃はするものの、もう飛べる力は残っていないようだ。あと少しだ。イリレスがドラゴンの頭上に飛び乗り剣を突き立てた。
「止めろ!!」
ドラゴンは大きく叫ぶとその場に崩れ落ちた。

「やったか? ドラゴンを倒した!」
衛兵達の歓声が聞こえる中、私は倒れたドラゴンをじっと見た。
このドラゴンは確かに私を見て何かを言っていた、それが気になる。
「メルヴィナ、どうした。大丈夫か?」
「ええ…大丈夫…」

ドクン…ッ。

心臓が震えた。

ドラゴンの死体から光の流れが見える。…そう、あの時と同じような。
その流れは私の体中を駆け巡るように満ちていく。鼓動が早くなり、今にも心臓が破裂しそうなくらいに。
「ううっ…!!」
堪らず蹲る。だが不思議なことに、少し経つと心臓は何事もなかったかのように脈打っている。
「おい! しっかりしろ」
「ごめんなさい、もう大丈夫…」
ロードに支えられながら立ち上がると、目の前のドラゴンがパチパチと炎に包まれながら、やがて骨だけになった。


「なに、これ…どうして…」
頭に謎の言葉が浮かぶ。聞いたこともないような言葉。
呆然と骨になったドラゴンを見つめていると、衛兵の一人が駆け寄ってきた。
「信じられない! お前は…ドラゴンボーンだ…」
「ドラゴンボーン…? それはどういう…」
「最も古い昔話は、まだスカイリムにドラゴンがいた頃まで遡る。ドラゴンボーンはドラゴンを倒し、その力を得ていたんだ。お前は力を吸収したんだ、そうだろう?」
「私…自分に何が起こったのか、分かりません…」
「確かめる方法がある。叫んでみろ、それが証明だ。古い伝説によれば、鍛錬せずドラゴンのように叫べるのはドラゴンボーンだけだ」
「叫ぶ? どうやって、何を叫ぶのか…あ…」
さっきの言葉。この言葉を叫べばいいのだろうか。やってみよう。そのときは軽い気持ちだった。

「Fus!」

大きく息を吸って叫ぶと、衝撃波のようなものが発生し、前方に立つ兵がよろめいた。
「何てことだ! その力は一体なんだ」
「たった今お前がやったのが”シャウト”だ! 間違いない。お前は本物のドラゴンボーンのようだな…」
他の衛兵も集まってきた。皆、不思議なものを見るように私を見る。

何なの、私がドラゴンボーン??
そんなこと知らない。私は普通の…。
ドラゴンボーンに詳しい衛兵の一人が他の衛兵に説明する中、私は何も聞こえないくらいにその場に立ち尽くしていた。

ずっと、残されたドラゴンの骨を見つめ、気が付けばイリレスや他の衛兵もホワイトランへ戻り、隣にロードだけが立っていた。

「あなたも…信じられないでしょう? こんなことが起こるなんて…」
「そう…だな。ドラゴンをこの目で見たのだって今日が初めてだから。おまけにそのドラゴンの力を吸収する人間が存在するなんて、聞いたこともなかったよ…」
「人間離れしてますよね、やっぱり…」
力なく笑う。
「ひとまず…ホワイトランへ戻ろう。このことを首長へ報告しろとイリレスからの言伝だけど、夜も遅い。今夜は宿でゆっくり休もう」

月明かりの下、お互い無言で帰り道を歩く。ロードもおそらくかける言葉に迷っているのだろう。
私は一体何者なのだろう。記憶を無くす前の自分は、自分がドラゴンボーンだと認識していたのだろうか…。
どうして記憶がないのだろう。このことに関係しているのだろうか。考え出すと止まらない。

突然の地響き。
どこからか声が聞こえた。
「ド…ヴァ…キン」
それが自分を呼ぶ声だと、どうして分かったのだろう。


「なんだ? 今の…」
ロードがあたりを見回す。
「おそらく…あそこからです」
山の上にある建物を指差した。
「え?」
「私を呼んでいるのです…戻って来いって」
言いかけてはっとした。戻る? あんなところ行った事もないはずなのに?
一瞬だけ、記憶が戻ったような気がした。

ホワイトランの宿屋へ着いた。店主のフルダが挨拶をする。
「いらっしゃい、夜遅くまでご苦労様。さあ、あたたかいスープを飲んでいって」
「宿を借りたいんだが。二部屋空いてるか?」
「あいにく一部屋しか空きがないわ、ごめんなさいね」
「そうか。仕方ない、俺は兵舎で休ませてもらおうかな」
「あら、一番いい部屋が空いてるのよ? ダブルベッドだから大丈夫!」


「いや、その…」
ロードが口ごもる。
「何? あなた達恋人同士なんでしょ? 何も不都合ないじゃない。ハイ、決まり! 案内するわね」
フルダはさっさと二階へ上がっていってしまった。
「…否定する間もなかったな。まあいいか、ベッドは君が使えばいい」
「え? 大きなベッドなんでしょう? 二人一緒に寝られませんか?」
私がそう言うとロードはぽかんと口を開けた。


「え…いや、それはそうなんだけど、俺が言ってるのは…」
彼はそれ以上何か言うのをためらったようだ。
二階に上がり部屋に入る。確かに広々としていて、一番いい部屋と言うのも頷ける。
「わあ、素敵なお部屋。先日借りた一階の部屋とは随分間取りが違いますね。ベッドも大きいですし。久しぶりにゆっくり休めそうですね」
ベッドに腰掛ける。
「そうだな。墓地探索にドラゴン退治…。三日くらい休みなく動きづめだったからなあ」
ロードは床に座り込んで篭手を外す。
「考えてみれば、あなたと出会ってまだ三日ほどですか。なんだかずっと一緒にいるような気がしてしまって…。本当に…今までありがとうございます。あなたのおかげで、今こうして無事に生きていられるのですから」
「気にすることない。俺のほうこそドラゴン退治なんて貴重な経験をさせてもらって、また少し強くなれた気がするよ。それで…明日、首長への報告が済んだ後はどうするか考えてるのか?」
「そうですね…。ウィンターホールドの大学にも行ってみたいのですが、あの山の上から聞こえた声も気になります…」
「ドラゴンボーン…か」

「君が記憶を失う前のことも、もしかしたらそこで思い出せるかもしれないな」
「私も同じ事を考えていました。あそこに行けば、なにか分かるのではないかと…」
「……なあ、メルヴィナ。記憶が戻って、もしもそれが辛いものだったとしても…受け入れられるか? 忘れたい過去だから、記憶を無くしているのかもしれない。思い出さないほうが幸せかもしれない」
「そうかもしれませんね…。けれど、思い出さなければ、私はずっと本当の私を知らないままです。辛い過去と同じくらい、大切な想い出や大事な人のこともすべて忘れてしまっているのなら、やっぱり…取り戻したいです」
「強いな、君は」
「そんなことありませんよ。自分がドラゴンボーンなんて得体の知れない者だと知って、本当は今でもどこかへ逃げ出したいくらいです」
「じゃあ今から二人で逃げ出すか?」
軽く冗談を言ってロードは笑った。つられて私も笑う。

「さてと、そろそろ休むか。俺は兵舎に行くから…」
「あ、ロード。こんな大きなベッドなんですから、一緒に寝ましょうよ。私は寝相いいほうだと思いますよ」
「……本気で言ってる? 男と一緒に寝るって、どういうことか分かってるのか?」
「どういうことかって? ええと?」
本当に彼が何を気にしているのかさっぱり分からなかった。
「……」
ロードは溜息をついた後、私の肩に手を置くとベッドに押し倒した。


「ロード?? 何ですか?」
彼は呆れた表情で私を見つめる。
「まだ分からないのか? 俺がこのまま君を無理矢理襲う事だって出来るんだ。男に『一緒に寝ましょう』なんて軽々しく言うな」
「あの、それは、男性と一緒に寝てはいけないということでしょうか? ごめんなさい、分からなくて」


「……記憶がないだけ? それとも…純真すぎるだけなのか…」
そう言うとロードは私から離れた。
「もっと男に警戒心を持ったほうがいい。そのままじゃ、これから先どんな目にあうか分からないぞ」
「…分かりました。肝に銘じておきます」
「急にごめんな。驚いただろう」
「ええ、少し…。男の人と寝るということは、きっと恐ろしい事なのだろうと分かりましたけれど」
「…っ? いや、ちょっと違うけど…。まあ、そう思ってくれれば、今後誤解を招くようなこともないか…」

結局彼は兵舎で眠ると言って出て行き、私はベッドで眠った。


 

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