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04話 – ブリーク・フォール墓地(1)

  • 2015.08.30
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


私達は夜も明けぬうちに再びリバーウッドに向けて出発した。
ホワイトランの兵士が先行してくれたおかげもあってか、途中狼に襲われることもなく、朝にはリバーウッドに到着した。

宿で朝食をとった後、探索中もしものときのために薬を買っておこうと雑貨屋リバーウッド・トレーダーに立ち寄ることにした。店内に入るとなにやら揉めている人達がいる。
「誰かがどうにかしないと!」
「駄目だと言ったろ! 冒険も、芝居も、盗賊を追いかけるのも駄目だ!」
「じゃあどうするつもりなのか聞かせてもらいましょうか!?」
店主らしき男性がこちらに気付いた。


「カミラ、この話は終わりだ。ああ、客か。聞かせてしまって悪かったな。気にせず買い物してくれ」
「あの…何かあったのですか?」
「ああ、いや。多少の…窃盗があったんだ。だが売るものはまだたくさんある。盗賊は一つのものだけを狙っていたようだ」
盗賊、と聞いたとき、ロードの顔色が変わった。
「一体何を盗まれたんだ?」
「装飾品だ、純金のな。ドラゴンの爪の形をした…。おそらく、盗賊は町の北西にあるブリーク・フォール墓地に向かっているはずだ。少々、心当たりがある」
「心当たりがあると言うが、何故盗賊がそこに向かうと分かるんだ?」
「先日、見かけないダンマーがこの店に来た。奴はその金の爪を見て根掘り葉掘り聞いてきたんだ。明らかに目の色が変わっていた。これは売り物じゃないと言うと帰ったが、墓地がどうのこうのと独り言を言っていたから。盗むとしたら奴に決まっている!」
「そうか。ブリーク・フォール墓地ならこれから行くところだ。もしその盗賊に会ったら取り返してこよう。必ず、とは約束できないが…」
「本当か!? ありがたい。どのみち半分は諦めていたところだ。危険な場所だから、絶対に取り戻してくれ、とは言えないさ。だがもし爪を取り戻してくれたら、積荷にある金貨をやろう」
先ほど揉めていた女性が席を立ってこちらに来た。
「爪を取り戻す算段がついたようね。どうもありがとう。私はカミラ。このルーカン・バレリウスの妹よ」
「どうだ、カミラ。これで行かなくてもよくなっただろう?」
「ええ、そうね。でもルーカン。これは予想外だったのでしょう? この方達が現れなかったらどうするつもりだったのかしら?」
「ぐっ…」

カミラは店を出たところでいくつかの回復薬と魔法の薬が入った袋を手渡してくれた。
「あなた方も、くれぐれも気をつけてね。これ、依頼料と言ったらおかしいけど。危険なところだと思うから、何かあったら役立ててね。墓地への案内役は必要?」
「いや、場所は分かる。薬はありがたく頂戴するよ」
「幸運を。戻ってくるのをルーカンと店で待ってるわ」

町のはずれに差し掛かったところで、見回り中のハドバルと行き会った。


「おお。ロードにメルヴィナじゃないか。早いな、もうホワイトランから戻ってきたのか? 報告ご苦労だったな」
「ああ。別件の任務でこれからブリーク・フォール墓地に行くんだ」
「ブリーク・フォール墓地だと? そりゃまたどうして…」
「詳しい話は後日改めてするが…、あそこにはドラゴンに関わりのある古代の遺物があるらしい。それを入手せよと首長のご命令だ」
「そうか。気をつけろよ、あそこはドラウグルがうようよいるって話だからな。ん? メルヴィナ、お前も行くのか?」
「ええ。もともと私が首長に頼まれたことでして…。一人では無理だろうとロードが同行してくれるのです」
「そうなのか、良かったな。こいつは信頼できる男だから頼りにしていいぞ。ただし魔法はからっきしだからお前がサポートしてやれ」
「おいハドバル、一言余計だよ。そりゃ確かに魔法は苦手だけど…」
軽く挨拶を交わしてハドバルと別れた後、墓地へと向かう。

それは巨大な墓地だった。
どうやら山賊がここを根城にしているようで、彼らは私達を見つけると矢を射掛けてくる。
出来ればおとなしく必要なものだけを持って帰りたいだけだったのに、まるで話が通じない。
だけど…そう考えているのは私だけのようだ。
ロードの表情が明らかに違う。山賊を倒すその姿には激しい憎悪が現れていた。冷たい憎しみのこもった声をあげて、敵を切り伏せていくその姿に思わず凍りつく。
先ほどのルーカンとの会話で盗賊の言葉が出たときのあの表情といい、彼は普通の人のそれよりも、もっと強く賊を嫌悪していることが分かった。
いや、彼は私に協力してくれている。余計な詮索はせずに今は集中しよう。

中に入ると意外にも明かりが灯されていて明るい。
「出るのはドラウグルのようなアンデッドばかりと思っていたが…山賊やスキーヴァーも多いな。気をつけろよ」
ロードの様子が元に戻っていたことに安心した。
「ええ。それにしても…随分と広い墓地ですね。古代ノルドの墓地はどこもこのくらい広大なのでしょうか」
「そうでもないな、ここは大きなほうだよ。王族の墓なのだろう」

奥へ進むと山賊が立っている。壁に隠れて様子を見ていると、山賊がレバーを引いた瞬間、無数の矢が山賊に降り注いだ。
山賊が倒れた後、安全を確認してレバーに近づく。
「罠にかかったようだな。このレバーであの扉を開くには仕掛けを解かないと、ってことか」
「このレバーの近くにある蛇の石版は何でしょうか? 扉の上にも蛇と…鯨。あ、これは真ん中の石版が落ちてきたのかしら」
「メルヴィナ、こっち」


「この石版は回せるようだな」
「あら、扉の上の石版と絵を合わせるということですね。やってみましょう」
石版を回し、絵を合わせてレバーを引くと扉が開いた。
「ああ、良かった。正解でしたね!」
ほっと胸をなでおろすとロードが驚く。
「え? 確信を持ってやったんじゃないのか?」
「いえ、間違いないとは思いましたけど…先ほどのあれを見た後ですと」
「それならそう言ってくれよ。危険なことは俺がするから」
「ごめんなさい…」
「いや。怒ってるわけじゃないんだ、こっちこそすまない。ただ、少しでも不安に思うのなら無理はしないでくれ」
「はい…」
「それじゃあ、気を取り直して行こう。君はこういう謎解きが得意そうだから、また何かあったら任せるよ」

先へ進むと、どこからか声が聞こえてくる。
「誰か…こっちに来るのか? ハークニール、お前なのか? それともビョルン? ソリング? 誰でもいい、とにかく助けてくれ!」
急いで声のするほうへ向かう。通路は次第に蜘蛛の糸が多くなって、通るのも困難なほどだった。
「こっちだ! 助けてくれ!」
蜘蛛の巣に捕らえられた人がいる。助けようと進むと上から巨大な蜘蛛が降りてきた。
「ロード! 上に蜘蛛が、気をつけて!」
「でかいな、なんだあれは!?」


それでもロードが両手剣を二度、三度振ると蜘蛛はその場に倒れて動かなくなった。
ハドバルの言うとおり、ロードは本当に頼りになった。戦闘はほとんど彼任せで申し訳ないほどに。

「おい、こっちだ! 誰かが来る前に早く下に下ろしてくれ!」
ルーカンの言っていた盗賊はダークエルフの男…。この男性もダークエルフ。
「降ろす前にひとつ。リバーウッドにあった金の爪を知っていますか?」
「ああ、俺が拝借した」
それを聞いたロードが両手剣を構えると男は慌てる。
「待て待て、俺を殺してしまってはあの爪のありかも、あの爪がどんなものかも分からないままだぞ?」
「ロード、話だけでも聞いてみましょう」
「…分かった」
ロードは渋々剣を収めた。
「とにかく下に降ろしてくれ。そしたら、見せてやるよ。ノルドがあそこに隠した力は信じられないほどすごいぞ」
「…いいだろう。降ろしてやる」
蜘蛛の糸を解き、男を解放した。
「アーケイの甘美な恵みだな、ありがとう。…なんて言うと思ったか? 馬鹿な奴らめ、何で宝を分け合わなきゃならない?」
男は自由になるとそう言い残して奥へ走り去っていった。
「クソッ、しまった!」
「追いかけましょう!」

二人で追いかけると、男は複数のドラウグルに襲われ既に事切れていたようだった。
「間に合わなかったか、足の速さが却って命取りになったな。…ドラウグルが三体、少し多いな。メルヴィナ、援護を頼む!」
「はいっ!」

ロードが二体を相手にしている間、残りの一体が背後に近づくところを炎の魔法で援護する。彼は二体目を仕留めた後に、そのまま回転するように最後の一体を斬りつけた。
その両手剣に重さを感じさせないほど、思わず見蕩れてしまうほど軽やかな剣捌きだった。

「ふう、何とか終わったな。メルヴィナ、怪我はないか?」
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」
「盗賊は死んでしまったが…ん? これは」
盗賊の懐から金の爪が見えた。
「持っていたんですね。探す手間が省けて良かったのでしょうか…」
「どのみちここで死ぬようじゃ奥まで到達出来なかっただろうさ。先へ進もう」

しばらく進むと一際明るい場所に出た。
「ドラウグルが出る気配もないし、少しここで休もう。疲れただろう?」
ロードは大きな灯火のもとに腰を下ろした。
「ええ、そうしましょうか。遺跡の中では時間の感覚がなくなりますね。そういえばお腹も空いてきました」


ふとロードのほうを見ると右腕から血を流している。返り血にしてはどうもおかしい。
「ロード。その腕、見せてください」
「え? …ああ、これ。さっきのドラウグルに斬られたやつか、通りで痛いと思った。大丈夫、この程度はかすり傷だ」
「笑ってごまかさないで。痛いのなら遠慮しないでください。ほら」
無理矢理にロードの腕をとり、回復魔法を施した。
「…大げさだな。このくらい、少し経てば自然と治るのに」
「あなた、先ほど私に言いましたよね? 無理せず言ってくれって。そのままお返ししますから。あなたに無理させているのですから、私にもこのくらいはさせてください」
「敵わないな。…ありがとう、助かったよ」

持ってきたパンやチーズ、りんごを食べ終わり空腹もおさまった。
「俺が見張っておくから少し仮眠をとったら?」
「ありがとうございます。けれど、私は眠くないので大丈夫です。あなたが休んでください」
「いや、俺も眠くないから。じゃあ、もう少し休んだら行こう」
「はい」
そのまましばらく沈黙が続いた。目の前に流れている川をなんとなく眺めながら、視線を感じて彼のほうを見た。
「…? どうかしましたか」
「あ、いや…。記憶、少しは戻ったか?」
「いいえ、少しも…」
「そのローブさ、前にどこかで見たことがあると気になって。今思い出したんだ。ウィンターホールド大学のローブだ」
「ウィンターホールド大学?」
「ああ。ここからずっと北の、ウィンターホールドにある魔術師の大学だよ。なにか思い出せない?」
「いいえ…。でも、その大学のローブを着ているということは、関係者である可能性は高いですね。そこへ行けば、もしかしたら自分のことを思い出せるかもしれない…」
「落ち着いたらそこへ行ってみなよ。記憶が戻ると良いな」
「そうですね、そうしてみます」

ああ、そうか。この任務が終われば彼とも別れることになる。
出会って三日足らずなのに、何故かこれからもずっとそばにいてくれるような安心感があった。
けれど、彼にも職務がある。この探索だって彼が厚意で同行してくれただけで、これ以上私のわがままで連れまわすわけにはいかない。
そう実感すると、少し寂しい気がした。

「そろそろ行こうか」
「ええ」
立ち上がると、ロードは私にこう言った。
「なにか困ったことがあれば、いつでも頼ってくれよ。内戦が激しくなってきたとはいえ、本来はスカイリムの民を守るのが帝国兵の務めだからな」
「ありがとうございます。…私、あなたのような人に出会えて本当に良かったです」
「ハハ。それは、無事にドラゴンストーンを手に入れてここを出てから聞かせてくれよ」
「あ、それもそうですね」
お互い小さく笑いあい、再び気を引き締めると遺跡の奥へ進んだ。


 

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