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56話 – アルドゥインの災い(1)

  • 2018.01.20
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 

私達は早朝ウィンターホールドを発った。

雲は出ていたものの雪は降らず、順調にイヴァルステッドに向けて馬を進ませた。


世界のノド…。
私はパーサーナックスから自分の正体を知らされたあの時、真実と向き合うことから逃げた。
彼なら、私がどうして人の身で存在しているのかを知っているかもしれない。
今度は逃げずに、私は告げられた全てを受け入れようと決めた。

ヨルグリム川沿いを進んでいると、宿屋が見えた。


昼時にさしかかったのもあり、昼食も兼ねて宿屋で一休みすることとなった。

「いらっしゃい。食事かい? どうぞ」
店主に軽く挨拶をして中に入る。
「…あら?」


奥の椅子に腰掛けている女性に気付き、思わず声を上げた。
「クレス!?」


「あはっ! 見覚えがあると思ったら、やっぱりメルちゃん達。思ったより早く再会できた、スカイリムって狭いのね」
ファルクリースからイヴァルステッドまでの短い道中を共にしたクレスティアだった。
「お元気ですか?」
「元気元気。あなた達も無事に旅を続けているようで良かったわ」
以前と変わらずにこやかに話すクレスに、ルーシスも笑って返した。
「こちらは三人旅だからな。一人旅の君よりは余程安全だろう」
「そうなのよね。…ここで会ったのも何かのお導きかしら。…うん、頼むだけ頼んでみよう」
クレスは下を向きぶつぶつと独り言を言ったあと顔を上げた。
「あのね。実は少し困ったことがあって…お願いがあるの」


「お願いですか?」
「ええ」
私達は昼食を取りながらクレスの話を聞くことにした。
川を挟んだ向こうの山中にラルドサールというドゥーマーの遺跡がある。彼女は任務でその遺跡に入りたいのだが、ドラゴンが遺跡上空を回っていて迂闊に近寄れないらしい。
そこで、前回一緒にドラゴン退治をした私達にも協力願えないか…ということだった。
「出来るだけ早くお使いを済ませたいんだけど、あのドラゴンが厄介でね。どうしようかとこの宿屋で待機しながら考えていたってわけ。…ね? お願いできないかしら。勿論お礼はするわ」
懇願するクレスに、ルーシスがテーブルに広げられた地図を見ながら半分困った顔で問いかける。
「私達もなるべく早く目的地に向かいたい。馬を走らせればなんとか今夜中に到着できそうだからな。君一人でもドラゴンの目をかいくぐって遺跡に入ることくらい簡単だろう?」
「それがそうもいかないのよ。あのドラゴン、嗅覚が凄いみたいで…薬で姿を消しても匂いで気付かれてしまうの」
話を聞いていたロードがミートパイをかじりながら質問した。
「まるで飢えた獣のようだな。なんとか逃げ切って遺跡に入るのも難しいのか?」
「前にあなた達と戦ったドラゴンとはどうも違う。広範囲に攻撃できる魔法の玉みたいな物を吐いていた。迂闊に近寄れないわ」
「そうか…その場所は俺達の進行ルートから逸れる。ルーシスの言うとおり、今夜中に到着するには寄り道できないんだが…」
ロードはそう言うと「どうする?」という目で私を見た。
「……イヴァルステッドは明日の到着でも構いませんよね」
「いいのか?」
「ドラゴンがいると聞いて放っておけません。何も知らずに近付いた旅人が被害にあうかもしれないから」
そう答えると彼ら二人は黙って頷いた。
「ありがとう、決まりね! そうと決まったら出発しましょう!」
クレスは満面の笑みを浮かべると椅子から立ち上がった。

ラルドサール遺跡から大きく離れた場所で馬から降り、様子を伺う。


「この見通しのいい坂を上ると遺跡が見える。やつはその上をグルグルと回ってるの。ここがぎりぎり気付かれない範囲ね。さあ、どう攻める?」
「……」
全員黙る。広範囲の攻撃というのが厄介だ。おそらく威力も高いだろう。
ブラックリーチにいたドラゴン型のオートマトンを思い出す。

血が騒いだ。

「ここで待っていて。……私が行く」
「メル!」
ルーシスが制止するように声を上げた。


クレスは目を丸くして私を見ている。
「え、どういうこと? メルちゃん一人で行くって事?」
「…お前、分かっているのか。あれは無闇に使うべき力ではない。限られた人間以外に見せては駄目だ」
ルーシスは横目でクレスを見るとそう言った。
「分かってる。でも…世界のノドに行く前に確かめてみたいの。私は、本当にこの力を思うようにコントロールできるのか」
「…出来なかったら?」
ロードが低い声で聞く。


「あなた達がいるから大丈夫だと思っています。もしも、暴走するようなことがあれば……そのときはお願いしますね」
軽く笑みをこぼし、全員に背を向けた。


坂を上りながら、遠くの空にドラゴンの姿を見つけた瞬間、私の心臓は一際大きく跳ねた。

(倒す…私にはそれだけの力がある)

身体中が燃えるように熱くなり、私は再び姿を変えた。

窮屈なところから解放されたかのように翼を大きく広げる。
この翼で自由に空を飛ぶにはブラックリーチでは狭すぎた。


丸く肥えたそのドラゴンは私の姿を見るなり、笑うような唸り声を出して向かってきた。

「貪食なるドラゴンよ、お前の脂肪にまみれた魂は不味くて食えんな」
高らかに笑い、迫り来る敵に全く恐怖を感じなかった。


動きの遅い相手の懐に潜り込み、大きく膨らんだ腹にファイアブレスを浴びせた。
「グワッ!」
「油が多いとよく燃えるだろう」
腹に移った火がなかなか消えず、ドラゴンは体を大きく揺らした。

「お前では私に勝てぬ」


「ねえ、教えて。一体どうなってるのよ。あの子ドラゴンに変身出来るの!?」
「…詳しくは伏せる。察してくれ」
「人の姿をしたドラゴンってことなの!?」


「そう喚くな。だから他人には知られたくなかったのだ」
「ごめんなさい。けど、普通驚くでしょ、あんなの見せられちゃ」
「……他言無用で頼むぞ。余計な問題は持ち込まれたくない」
「それは勿論。彼女があの力でドラゴンを倒してくれるのならこっちも大助かりだもの。それにしても…ウェアウルフの話は聞いたことあるけど、それとは比べ物にならないわね。……ホントに、あの子なの?」


「……あれは、メルヴィナだ。けど…違う」


「ほら、どうした。お前は範囲攻撃が得意らしいな。自慢のシャウトを放ってみろ」
挑発すると、ドラゴンは大きな丸い火の玉を吐いた。それをわざとこの身体に受ける。
全く効かないことを確信した。やはり、この身体は炎のダメージを受けないようだ。
「ぬるいな。では、お返しにこちらも炎をお見舞いしよう」


体中に溜めていた熱を一気に放出した。
炎が噴出し、目の前にいたドラゴンは全身に高熱を浴びた。一際大きく叫ぶと、そのまま地上に落下していった。


息絶えた敵を冷たい眼差しで見下ろす。
「…フン。やはりこいつの魂は喰えぬか。お前もブラックリーチにいたあのオートマトンと同じ、紛い物のようだ」


「…まだ足りない」
顔を上げ、再び羽ばたく。

足りない。まだこの身体に溜まった熱を放出し切れていない。

宙を舞い、獲物を探した。


 

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