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47話 – 想い(1)

  • 2017.02.04
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


宿屋の扉を勢いよく開き、視界にルーシスの姿を見つけ駆け寄った。
「ルーシス!」
椅子に座りウトウトとしていた彼が、突然の私の声に驚いて目を開く。


「な、何だ。メルか。脅かすな。どうしたのだ、そんな大きな声を出して」
「ロ、ロードは…?」
「ロード? さっき戻って着替えていたぞ。その辺にいないか?」
その言葉にひとまず安堵し、あらためて宿屋の中を探す。
「…いないわ。どこに行ったか知らない?」
「すまん。私もウトウトしていたものでな。…何かあったのか?」


「…怒らせてしまったかもしれないの。謝らないと。外を探してみる」
ルーシスにそう言って宿屋を出た。

図書館で彼の姿が見えなかったとき、どこかへ立ち去ったのではないかとひどく不安になった。
宿で着替えたのなら、きっと遠くへは行っていない。町のどこかにいるはず。
夜空の下を探し歩いた。


ふと立ち止まって目を凝らす。間違いなくロードだ。こういうとき、彼の長身は見付けやすい。
少し気持ちを落ち着かせてから小走りで彼に近づいた。


彼は廃屋のそばで、大学の方角を見ていた。月を見ていたのかもしれない。

「ロード…」
後ろからそっと声をかける。


「……」
ゆっくりと振り向いた彼は、ただ無言で私をじっと見た。


「あの…。図書館ではごめんなさい。私…あなたがいなくなったことに気が付かなくて。手伝ってくださったのにお礼も言えなくて…」
「…なんだ、そんなことか」
「え…。ええ。気分を悪くしてしまったのではないかと…」
「それで、俺が怒ってると思って…大学からわざわざ探しに来たのか?」
「…はい」
「書の手掛かりは掴めたのだろう? 良かったじゃないか」
「……」
いつもより声が低い。怒っている、そう思ったら言葉が出なくなってしまった。


「俺は…そんなこと気にしていない。そう思わせてしまったのなら謝るよ。すまない」
ロードは遠くを見ながら話す。
「けれど、なんだか不機嫌ですよね…。どうして…」
恐る恐る尋ねると彼は振り向いた。
「『どうして』? …こっちが聞きたいよ」
「え…」


「…大学の…あの彼には自然に微笑んでたじゃないか。俺には…無理に笑ったりしたのに、どうしてだよ」
「…」
「…笑えない何かがあるんだろう? 話してくれるまで待つなんて言ったって、気になって…気になってどうしようもないんだ。そんなに話すのが嫌か」
「ちが…違います」
「何が違うんだよ。俺にだけ、態度を変えて…。黙ってる事だって他の男にはすんなりと話すんじゃないのか?」
「……」
言葉を詰まらせて俯くと、彼は語気を弱めた。
「…ごめん、大人げなかった。どうかしてるな…」
「いいえ、私が……。ごめんなさい…」

お互い黙ったまま時間だけが過ぎる。
ここで打ち明けるべきか。
躊躇していると、彼が先に口を開いた。


「…俺が今まで一緒に来たのは、ドラゴンボーンの君を守ると決めたから。重荷を少しでも軽く出来たら…、はじめの理由なんてそれだけだった。でも…君が他の男と笑い合っているところを見て…嫉妬したんだ」
「…ロード」
「嫉妬して…ようやく本当の想いに気付いた」

「好きだ。…この旅が終わっても、ずっと傍にいたいんだ」


「……っ!」


「……」

一番欲しかった言葉。
それなのに…。

嬉しいのか悲しいのか、理由の分からない涙が流れた。


「…私は…」


何も言えない。振り返ると逃げるようにその場を走り去った。


「メルヴィナ……」


 

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