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45話 – エルダーの知識(1)

  • 2017.01.08
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


馬に乗り、イヴァルステッドからダークウォーター川沿いの街道を北へ進んだ。
「この時間だと馬を走らせてもウィンドヘルムに到着するのは夜中か。途中どこかで休むとしよう」
ルーシスが話すと、ロードが聞き返した。
「この街道沿いに宿屋なんてあったか? 野宿するにも簡易寝袋しかないぞ」
「いや。宿屋はないが…砦でも洞窟の中でも寒さはしのげるだろう?」
「それもそうか。夜は冷えるし、野宿するよりはマシだな」

日没後の暗い街道を進むと、遠くに明かりが見えてきた。人家だ。
「ああ…ミックスウォーター工場か。あそこの主人には一度世話になったことがあってな」
ルーシスが話す。
家のそばで馬を止めた。
「一晩宿を借りられないか尋ねてくる」
ルーシスが家主に挨拶をしている間、ロードと二人で待つ。


「ルーシスは顔が広いんだな」
「え、ええ…。そうですね」
「…」
「…」
気まずいような空気が流れる。なにか言葉を返そうと思っても、何を言えばいいのか思いつかなくて黙り込む。
それは、彼も同じだったのだろう。
沈黙が続く中、極光号を撫でて気持ちを落ち着かせた。

「待たせたな。そっちの家に泊まっても良いそうだ」
ルーシスが戻ってきた。
「そうか。助かった」
「ありがとう、ルーシス」

「ここの工場で働く労働者が寝泊りしている家屋らしい。たまたま里帰りで誰もいないから好きに使っていい…と…」
扉を開いたルーシスが固まった。


中に入ると、随分と物が散乱している。床に何本も転がるエールの空瓶に、いつからそこにあるのか分からない固くなったパン。
月明かりに照らされ、部屋に舞う埃がチラチラと光る。
「うっ…。手付かずと言っていたのはこの事か…。だが、ベッドも丁度三台ある。このくらいは良しとしよう…」
ルーシスが自分に言い聞かせるようにベッドを手で叩くと、空中には更に埃が飛んだ。
「……」
舞い上がる埃を見ながら、どうやら絶句している。
「ルーシス…大丈夫?」
「…私は散らかった部屋が大嫌いなのだ。一時的になら我慢も出来るが、ここで休むとなると…」
「さっき、寒さがしのげればいいって言ってたよな?」
ロードが不思議がる。
「これでは砦や洞窟と変わらない…」
ルーシスが珍しく弱音を吐いた。

私とロードは椅子に腰掛け、持参した食料を取り出し食べ始めた。
ルーシスは「こんなところでよく物が食べられるな」とでも言いたげな表情で食料を持つと外に出て行った。


「君は平気なんだな」
「えっ?」
突然話しかけられて肩が一瞬震えた。
「ルーシスがあれほど綺麗好きとは思わなかったが、あいつと一緒に暮らしていたのなら君も同じだろう」
「いえ、私は気にしていません。宿を借りられただけでも有り難いことですから。あなたは大丈夫ですか?」
「ん? 俺は全く気にしないな。寝床があるだけ上等だよ。まあ、これがもしも自分の家だったら…さすがに嫌だけどな」
ロードは部屋を見回して苦笑した。
和ませようとしてくれている彼の気遣いに笑顔を作って応えるが、すぐにまた俯いてしまう。

「…メルヴィナ」
「はい…?」
顔を上げた。


「頂上で何があったのか…ルーシスには話したんだろう」
「なにも…」
「嘘つくなよ、顔を見れば分かる。…家族の彼と同じように接してくれと言っているわけじゃない。けど、一緒にいるんだ、少しくらいは何か話してくれても…と思うのはおかしいことか?」
「いえ、そうですよね…」
「まだ、俺にそこまでの信用は無いんだな」
慌てて否定する。
「そ、そんなわけ…っ。信頼していなければ、はじめから旅の同行を願ったりしません…」
「それじゃあ、何故話せない?」
食い入るように私を見る。その真剣な眼差しから逃げるように目を逸らした。
「ごめんなさい…。今は、話せません。けれど、いずれ必ず話します。それまでは…」
「……」
少しの沈黙の後、彼は静かにため息をついた。
「…分かった。君が話してくれるまで待つよ。…すまなかった」
俯きながら首を振る。
「いいえ…。私こそ…」

「なあ、メルヴィナ。もうこの事は聞かない。だから君も…無理に笑ったりしないでくれ。気になって仕方ない」
「え…」
「昨日からそうだろ。ずっと見てるから、君が笑顔を繕っている事くらい分かる」


「……」

作り笑いを彼に見透かされていた。
それは、これまでの私を知っているから。私を見ていてくれたから。
そう実感したら胸が詰まって何も言葉が出なかった。

早朝。落ち着いて眠れなかったというルーシスに起こされ、簡単に部屋の掃除をしてから出発した。
ウィンドヘルムを西に大きく迂回してウィンターホールドへの街道を進む。

朝日も昇りきった頃、前方に見覚えのある姿を発見した。


「まさか…アルドゥイン!?」
またドラゴンを復活させようとしているに違いない。馬から下りて近づき様子を見る。


「ヴィントゥルース! ジール グロ ドヴァー ウルセ!」
アルドゥインは私達に気付きながらも意に介せず、ドラゴンを復活させるとまたどこかへ飛び去っていった。


「復活したばかりだ! 飛び立つ前に出来るだけ攻撃するぞ!」
ルーシスとロードは二人がかりで翼を切りつけた。
ヴィントゥルースが彼らにブレスを吐こうとしたところをシャウトで中断する。
「Fus!」
ドラゴンは怯み、その隙にロードが両手剣を力一杯に振り抜くと、片翼は骨ごと断たれた。
だらんと地に着いた翼を見て、ルーシスが感嘆する。
「凄い力だな…!」
「いや、凄いのはこの剣だ。なんて切れ味だ!」
飛ぶ力を失ったヴィントゥルースは、尾を振って背後のルーシスを攻撃した。
「おっと。しっかり見ろよ、こっちだぞ!」
なぎ払おうとするヴィントゥルースの尾を軽く避け、雷撃の魔法を当てる。

「Yol!」
続けざまにファイアブレスを当てる。


ヴィントゥルースは驚いたように見開くとこちらを向く。
「ぐっ…ジョールが、ドヴの炎を扱えるのか…!?」
「よそ見するなよ!」
ロードが喉元を狙う。

三人の集中攻撃でドラゴンは倒れ、私はその魂を吸い取った。
「同族」の魂を…。


「メル。さっきの炎は何だ? 魔法ではないな」
「シャウトよ。パーサーナックスから教えてもらった。…口から炎を吐くなんて、ますます人間離れしていくわね」
自嘲を込めて笑って見せた。

再びウィンターホールドへ歩を進める。


「メルヴィナ。ドラゴンだ、こっちへ向かってくる」
ロードの指差す方向を見ると、北の空からドラゴンが飛来してくる。
「今日は連戦か。行くぞ、メル」
ルーシスに頷いて馬から下り、ドラゴンに向かった。


「Yol!」
ファイアブレスを吐きながら、回復魔法でルーシス達のサポートをする。
オールド・フロルダンで二人が手に入れた剣は、素人目にも質の高さが分かる。
彼らは以前の剣で戦っていたときに比べて、明らかにドラゴンを倒すまでの手数が減っていた。
何度かドラゴンと対峙しその攻撃習性を把握していることもあって、彼らは流れるようにドラゴンを仕留めた。

「二人とも。連戦お疲れ様です」
ドラゴンの魂を吸い終わり、二人に礼を言った。
「どうということはない。お手の物だな」
ルーシスが笑う。
「しかし、ドラゴンに遭遇することが増えてきたな。アルドゥインがそこら中で手当たり次第にドラゴンを復活させ続けている証拠か…」
ロードが話す。
「ええ。被害が増えないためにも、早く進まなければなりませんね」
私の存在する理由が、アルドゥインを止めることなら。私は受け入れなければならない。
自分がドラゴンであることも。同族の魂を喰らい続けて、自分がより「ドラゴン」に近づいていることも…。

ようやくウィンターホールドに到着した。
何ヶ月ぶりだろうか。随分久しぶりに訪れたような気がする。


宿屋に馬を預けて、大学に向かった。


 

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