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39話 – オールド・フロルダン(1)

  • 2016.08.24
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


赤鷲要塞への上り坂入り口にやって来た。
「この先にもフォースウォーンはいるのかしら」
「まず間違いないだろうな。この要塞はリーチの民にとっては縁の深い場所だ…気をつけて中に入ろう」
ルーシスが言う。


中は明るく、人の気配がする。
「侵入者だ!」
大きな声で叫ぶフォースウォーン。同時に遠くから矢を射掛けられた。
「チッ、もう気付かれたか。矢に気をつけ…」
ルーシスが話し終わらないうちにロードが前に飛び出す。
「あっ、おい待て!」
「先行する!」


フォースウォーンが仕掛けていた罠を発動させると、坂の上から大きな岩が勢いよく転がりだした。
ロードはそれを巧みに回避しながら坂を駆け上り敵の懐に飛び込んだ。
「うおおっ!」
「ぐあ!!」

ルーシスと私が駆け上がり彼に追いついた時にはもう片付いていた。
「ロード。前から言おうと思っていたのだが…」
「なんだ」
「一人で敵の中に突っ込むのはお前の癖か?」
「ああ、すまない。弓使いを見るとつい、な」
「悪い癖だ。遠距離の敵は私やメルの魔法に任せておけ。無駄に怪我をするぞ」
ルーシスはロードの肩を掴んで私を見る。鎧の隙間から血が滲んでいた。
「っ! その傷、やはり攻撃を受けていたのですね…早く手当てを」
「矢を避け切れなくてな、丁度鎧の隙間に刺さってしまった」
「ロード。前にも言いましたが、少しの傷でも毒が入り込む可能性だってあるのです」
回復魔法をかけながら少し厳しい口調でロードを見る。
「…ごめん、そうだったな」
彼はそう言うとばつが悪そうに頭を掻いた。


「メル。お前はどう思う」
「え?」
「ロードの戦い方についてだ」
二人が私を見る。少し考えてロードを見た。
「私は、危険な戦い方はして欲しくないと思います。確かに、あなたは戦闘経験も豊富でしょうけど…。今は一人じゃありません。ルーシスもいます。私もあなたのサポートをします。ですから…あまり無茶はしないで下さい」
「だそうだ。メルもこう言っているのだ、これからはもう少しチームワークを大切にしようじゃないか」
「…努力する」

ロードが前に飛び出したとき、不安を感じた私の表情をルーシスは見逃さなかったのだろう。
さりげなく気を遣ってくれたルーシスを見つめると、彼は小さく笑って頷いた。


向かってくるフォースウォーンを倒しながら階段を上る。


「この剣がヒャルティの剣でしょうか?」
台の上に置いてあった剣を見つける。ロードが剣を手に取った。
「いや。この剣は真新しい。とても第二紀からのものとは思えないな。それに、フォースウォーンもさすがに年代物をこんな無造作に置いておかないだろう。どこか宝箱にでも保管してるんじゃないか?」
ロードに頷く。
「それもそうですね。もう少し探してみましょう」


要塞の頂上まで来た。
このあたりのフォースウォーンの長らしき男を倒し、周辺を探す途中で祭壇が目に付いた。


禍々しい儀式が執り行われた後だろうか。
台の上に本が置かれてあるが手に取ろうという気にはならず、表紙にだけ目をやった。
「『赤鷲の儀式』…?」
「赤鷲とは第一紀頃、帝国と戦ったリーチの王の名だ。もしかするとフォースウォーンはこの祭壇で、彼の復活でも試みたのかも知れんな」
ルーシスが話す。
「山賊も野蛮だが、フォースウォーンはそれとはまた違う危険さがあるな…。どちらがマシか、とは考えたくないが…」
ロードが呟く。
四肢を切断された動物の死体から目を逸らしその場を離れた。


テントの中に大きな宝箱が置かれている。
開けると、ガラクタとも思える物の中に古めかしい剣が入っていた。
「あったか? メル」
「ええ、多分これがそうじゃないかしら。名前でも書いてあれば確実なのだけど…」
剣を手に取り見つめる。


「ヒャルティ・アーリービアード…。嘘…名前が彫ってある…」
「ハハッ。確定だな」
「意外だな…」
ルーシスが笑い、ロードが驚く。
「でも、見つかって良かったわ。急いで宿屋へ戻りましょう」

来た道を戻り、カース川に架かる橋を渡ったところで馬を呼ぶ。
三頭とも無事なことに胸を撫で下ろした。

オールド・フロルダンへ到着し、相変わらず鍋のスープを気にしている亡霊に声をかけた。


「ま、待たせたな。私の剣だ、これが欲しかったのだろう?」
思わず声を低くしてしまう。亡霊は剣を受け取ると歓喜の声を上げた。
「おお…まさに! 仕える事ができて光栄だ、兄弟。そうだ、祝杯をあげよう」
「は?」
「剣が見つかった喜びと、お前の兄弟になれたことの喜びを噛みしめたい。フロルダンを出る前に。さあ、杯を。まずはヒャルティ、お前からだ」
亡霊はすぐそばにあったゴブレットにワインを注いで私に手渡す。
私は半ばヤケになってそれを飲み干した。
「か、かんぱーい!」


「おお…良い飲みっぷりだ、ヒャルティ。乾杯!」


「…クッ」
「フ、フフッ」
背後から二人の押し殺した笑いが聞こえる。
「メル…いや、ヒャルティ殿。今夜は兵士の気が済むまで付き合ってやれよ? ロード、着替え終わったら私達も飲むか」
「そ、そうだな…。メルヴィナ、飲みすぎるなよ」
ルーシス達は笑いながら下へ降りていった。

私はカウンターでエイディスの好奇の目にさらされながら、亡霊に付き合いひたすらワインを飲み続けた。
これで彼が満足して消えてくれることを願い…。
そして――。

「…ル。メル。大丈夫か?」
ルーシスに肩を揺さぶられて起きる。
「ん…? なんだ…。まだ飲めというのか?」
「タロスのふりはもういいぞ。亡霊は消えた。頑張ったな」
「それは…よかった…」
ゴツン、とそのままカウンターに突っ伏す。
「案の定飲みすぎたな…。メルヴィナ、立てるか?」
ロードの声も聞こえるが、カウンターに顔をうつ伏せたまま動けなかった。
「無理…」

「ロード、ベッドまで運んでやれ」
「分かった」


「それにしても、私達が着替え終わってここへ来るまでの時間でそんなに飲んでしまったのか?」
「多分…思うほどは飲んでないだろう。彼女は酒に弱いんだ」
「おや、そうだったのか。知らなかったぞ」

…これは、夢?
ふわふわと身体が軽くて、自分のものではないみたい。
それに、とても心地良い。


夢なら、醒めないで。ずっと、このままで…。

意識が飛んだようで、気付けば私の身体はベッドの上に横たわっていた。
心地良いのに息苦しくて、この息苦しさをどうにかしたくて口を開いた。
「ロード…」
「ん…? 具合はどうだ。水でも飲むか?」
「平気…。ふわふわして、気分が良いの…」
夢とも現実とも区別の付かないようなぼんやりとした中で、私は甘えたような口調でロードに話しかけた。


「今まで、傍にいてくれてありがとう…。私…あなたに会えて良かった…」
「どうした? 急に」
「私は…一人では何もできない…。ドラゴンボーンなんて言われても…強くない。あなたやルーシスがいないと…ドラゴン一体すら倒せない…」
「それは分かっている。君が一人でドラゴン退治できるのなら、俺やルーシスは必要ないだろう?」
「ええ…。だから…必要としている。本当に…あなた達のおかげで、ここまで来れたのだから。…ありがとう…」
「気にしなくて良い」と静かに微笑んだ彼に、今まで言葉にできなかった想いが溢れる。

「…ソリチュードで守ると言ってくれたとき、凄く嬉しかった。私がドラゴンボーンの役目を果たすまで、あなたは側にいてくれる。もう少し、一緒にいられる…って」
「メルヴィナ…」


高鳴る胸の鼓動も、息苦しさも、熱い身体も全て夢の中にいるような感覚だった。
これが夢なら、私が本当に伝えたいことは…。

「けれど…その役目が終わればあなたは離れてしまうのだと思うと不安で。…出来ることなら、わたしは…あなたと一緒にいたい。ずっと、側にいて欲しい…」


「……っ」

心にしまっていたことを言葉にできた満足感から、重い瞼を閉じる。
ふいに髪に何かが触れて目を開けると、すぐ側に私を見つめる彼がいた。
「…?」


「俺だって男なんだ。そんなこと言われたら…本気にするけど、いいんだな」
「…嘘なんて言わない。わたしは、あなたが……」
彼の大きな手が私の髪を撫でる。それがとても心地良くて、目を閉じてそのまま…。

「メルヴィナ? ……眠ったか」

「……」

「…もう、とっくに決めてた。君がドラゴンボーンじゃなくたって……ずっと、傍に……」

「……おやすみ」


 

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