FC2ブログ移転のお知らせ

38話 – アルドゥインの壁(4)

  • 2016.08.15
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


洞窟内に入り少し進むと、聖堂の面影を残す空間に出た。
「これは期待できそうね」
デルフィンが言う。
「そうだ。間違いなくここはアカヴィリ初期の石造建築だ。ここに来てくれ」
先に進んでいたエズバーンが呼ぶ。


「この柱は?」
「アカヴィリのシンボルだ。それぞれ”王”と”戦士”、そして”ドラゴンボーン”を意味する」
「三つの柱を”ドラゴンボーン”のシンボルに合わせればいいのですね」
柱を回転させシンボルを揃えると、大きな音を立てて橋が下りた。デルフィンが先に橋を渡る。
「仕組みは分からないけど、上手くいったわね。ブレイズの先達たちが何を残してるのか楽しみね」
「デルフィン、警戒はすべきだ。古代のブレイズがどんな罠やシールドを設置しているか分からないからな」
「ええ、勿論。そのためにも私が先行するわ。ドラゴンボーンに先頭を歩かせるわけにはいかないものね」


「待て」
エズバーンが止めた。
「ここでは気をつけないと。床の圧力板にシンボルが描かれているのが分かるだろう?」
「ええ…先ほどの柱のものと同じですね。ということは、ここも…」
「そうだ、”ドラゴンボーン”のシンボルだ」
「分かりました。慎重に進んでみます」
圧力板の上を歩き出すと、ルーシスが心配そうに声をかける。
「メル、大丈夫か? 私が代わろうか」
「平気よ。これはドラゴンボーンの私がすべきことだと思うの」

ドラゴンボーンのシンボルを辿って進むと、突き当たりに罠を解除する仕掛けがある。


鎖を引っ張ると圧力板の罠が解除されたようだ。
「よし、いいぞ! 入り口はもうすぐのはずだ」
エズバーンが早足で先へ進んでいった。


「素晴らしい! 意外にも保存状態は良好だ。ここを見てくれ! 古代のブレイズがどれほどレマン・シロディールを崇めていたかが分かる。ここ全体がレマンを祭った祠のようだ。彼は例の神秘的な状況下で、アカヴィリの侵攻を退けた」
あたりを見回しながらエズバーンが話す。エズバーンは床にある円状の紋章を見た。
「ああ…これが”血の印”だ。もう一つの失われたアカヴィリの技術だ。引き金が…血によって引かれたわけだ。ドラゴンボーン、お前の血だ」


「私の血?」
「エズバーンが正しいのかも知れないわ。床に彫刻された紋章にあなたの血を使ってみて」
ルーシスがデルフィンを睨む。
「『かも知れない』? …確証も無いのに彼女に血を流せというのか?」
「あら、他に先へ進む方法があるのなら教えてちょうだい? 今はエズバーンの言うことを信じるしかないのよ」
「…チッ」
「ルーシス、私は大丈夫。傷を付けたって、すぐに回復魔法を使うから」
「痛い思いはするだろう」
「大丈夫」
強くルーシスを見つめると、彼はそっとナイフを取り出した。
「…よく研いである。少し当てるだけで切れるほどだ」
「…ありがとう」
ルーシスからナイフを受け取り、紋章の中で跪いた。


手の平に刃を当て、息を止め一気に滑らせる。
「く…っ」
血がボタッ、ボタッと流れ落ちていく。
少しの静寂の後、血は吸い込まれるように消えて紋章が輝きはじめる。
そして壁の像が動き、奥に階段が見えた。
「あれよ! 見て。やったわ、入り口よ!」
デルフィンが歓喜の声を上げる。


「お先にどうぞ、ドラゴンボーン。スカイ・ヘヴン聖堂に最初に足を踏み入れる栄誉はあなたのものよ」
彼女は回復魔法をかけている私を見た。


「もう罠の警戒はしなくていいのか?」
ルーシスが聞く。
「この先が本当の聖堂だ。中で何を見つけるかは分かるまいが、罠はもうないだろう」
エズバーンが答える。
「『だろう』ね…。憶測で行動しなければならないことは分かっているが…。どうする、メル?」
「私は一番乗りで聖堂に入りたいとは思わないけれど…」
「そうだな。最初に足を踏み入れる栄誉はデルフィン達に譲ろう。先に行ってくれ」
「あら、いいの? ではお言葉に甘えて…」
デルフィンとエズバーンは先に聖堂への階段を上がっていった。

「すばらしい! 最初のアカヴィリの浅浮彫り…ほとんど全てが完璧な状態で残っている!」
「エズバーン、そんなに興奮しないの」
奥から彼らの興奮した話し声が聞こえる。


「メル、傷は?」
「ええ、とっくに治したわ。ありがとう、心配してくれて」
「どうにも彼らはお前を顎で使ってるように見えてならん。お前はドラゴンボーンだ。なのに敬意が感じられない」
「彼女達にとって私は小娘も同じだからでしょう。けれど、私は顎で使われているなんて思っていないわ。気にしないで」
「だがなあ…」
「ルーシス。気に入らないのは分かるが、先へ進むために彼らの情報が必要なことも確かなんだ。ここは堪えてくれ」
「ロードの言う通りよ、ルーシス。私が気にしていないのだから、あなたも気にしないで」
そう言うとルーシスは肩をすくめた。
「…仕方ないな」

気を改めて、私たちはデルフィン達の後を追って階段を上がり聖堂へと進んだ。


階段を上りきると、広い空間に出た。全員がその光景を見渡す。
「ここが…スカイ・ヘブン聖堂…」

「ショールの骨にかけて! これだ! アルドゥインの壁…ほとんど痛んでいない。これほどの見事な第二紀初期の、アカヴィリ彫刻のレリーフがあるとは…」
エズバーンが大きな声をあげた。


「アルドゥインの…壁。あれが…」
その壁にゆっくりと近づく。

壁の中央には大きくドラゴンが彫られている。
「見てくれ、これがアルドゥインだ! パネルはアルドゥインと竜教団がスカイリムを統治していた時代の始まりへと、歴史をさかのぼっている」
エズバーンがレリーフを指でなぞりながら説明する。
「ここだ、ドラゴンの大君主に抗った人間の反逆者、伝説の竜戦争」
「エズバーン、必要なのは情報よ。美術史の授業じゃないわ」
デルフィンが急かす。
「待て、そう急かすな。なるほど、ふむ…」


エズバーンは何かを掴んだようで、私を見た。
「アルドゥインの敗北がこの壁のテーマだ。ほらここだ、空から堕ちている。ノルドの舌、つまり声の達人達は、奴に向かって配置されている」
「シャウトを使ってアルドゥインを倒したということでしょうか…?」
「おそらく、ドラゴンやもしくはアルドゥインそれ自体に特有の何かに関係があるのだろう」
「シャウト…空から堕ちる…。そのシャウトを使えば、空を飛ぶドラゴンを地上に叩き落せる…?」


「耳にしたのは初めてよ。ドラゴンを空からふるい落とすことのできるシャウト…あなたは知っていた?」
デルフィンが聞く。
「いえ。そんな話、聞いたことはありませんでした。グレイビアードからも…」
「そう言うと思ったわ。そのグレイビアードに手助けを頼まなければならない。彼らを巻き込まないで済めばと思っていたけれど、仕方ないわね」
ため息をつきながら話すデルフィンに尋ねる。
「…デルフィンは彼らが気に入らないのですか?」
「グレイビアード達は、自分の力を恐れるあまり、それを使おうとしないの。考えてみて。内戦を止めるためや、アルドゥインについて、彼らが何かしようとした? 答えはノーよ。彼らはあなたの力を恐れているの」
「私の力を…彼らが恐れている? …そうかもしれませんね。私はドラゴンボーンですし、彼らとは”声”の使い方が違いますから。この力が危険なものになり得ることを彼らは知っているのでしょう」
「確かに力は危険なものよ、使い方を知らなければね。優れた英雄は皆、自らの力を使う方法を学ばなければならないものよ。時にはその力の使い方を誤る者もいる。でも、失敗を恐れていては何もできないままになってしまう。山にこもってしまったグレイビアードのようにね」
「あなたは彼らを、力を持つのにそれをあるべき時に使おうとしない人達だと言いたいのですか? そして、今度こそは彼らにも世界のために動いてもらおうと」
「そう思っているわ」
「…分かりました。アーンゲール師がこのシャウトについて知っているか確かめてみます」
「お願いね。あなたが彼らに好かれているようで良かったわ。エズバーンや私なら、いくら頼んでも助けてくれはしないでしょうから」

引き続きレリーフの調査をするエズバーンと、聖堂の中を調べるデルフィンとは別行動をとった。


「ここ…古代ブレイズが休んでいた部屋のようね」
ベッドの状態も良い。この部屋で休むことにした。

テーブルを囲み、持参した食料を食べながら話し合う。
「明日はここを出て、まずヒャルティの剣探しに行かないとな」
「場所は分かるのか? ルーシス」
「大体の場所は宿の女将に聞いた。カーススパイアーの近くにある、赤鷲要塞がその場所のようだ。剣を見つけたらそのままオールド・フロルダンへ戻り、そこで一晩泊まってその後は…。メル、どうした?」
声をかけられ重い瞼を開く。
「あ…ごめんなさい。なんだか、すごく眠くて…」
「予定は決まったんだ、今日はもう休もう」
ロードに促されベッドに横になった。


 

2
TOPへ