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34話 – 追い詰められたネズミ(4)番外

  • 2016.05.21
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 


「……」


「なあ、あんた、確かメルヴィナと一緒に居た人だよな?」
「うん…? 君は、ハドバルと言ったかな」
「そう。ロードの友人だ」
「彼らは一緒ではないのか? 馬を引き取ってくると言って出たが」
「ああ。今ロードがメルヴィナに乗馬を教えてる。邪魔しちゃ悪いんで俺だけ飲みに来たんだ」
「そうなのか。…おっと、礼が遅れてしまったがヘルゲンではメルを助けてくれて感謝する。私はルーシス。彼女の保護者とでも言おうか」


「――へえ、それじゃあ彼女は記憶を取り戻せたんだな。良かったよ、俺も少しばかり気にしてたんだ。それにしても、記憶が戻れば性格ももっとしっかりするもんだと思ってたが、相変わらずのほほんとした感じだな。噂のドラゴンボーンとは到底思えんよ」
「だろう? あの子はドラゴンボーンではあるが中身は普通の女性と変わらないからな」
「いやあ、普通の女より擦れてないというか、もっと純真だな」
「君もそう思うか」
「まあ、ああいう女性だからあいつも惚れたんだろうな」
「あいつというのは、ロードのことか?」


「もちろん。本人は全く自覚がないようだが…。馬をプレゼントするくらいだからな、相当だぞ」
「なんだ、ロードの馬で乗馬練習をしているのではなくて、メルのために馬を買ったのか。…これは驚いた」
「そうなんだ、俺も驚いたさ。けど、ようやくあいつも女性に目を向けられるようになったんだ。嬉しいことだよ」
「ふむ…。つかぬ事を聞くが、彼に恋人はいないのか?」
「俺の知る限りじゃ、いないな。数年間はずっと独り身だろう」
「ほう…不思議なものだな。容姿や性格に難があるようには思えないし、女嫌いというわけではないだろう? まさか、男が好きなのか…」
「おいおい、冗談はよしてくれ! いや、そういうのじゃなくてな…」
「どういうのだ」
「……まあ、いいか。これから話すことは、胸のうちに秘めておいてくれ」
「分かった、聞かせてくれ」


「ロードはな、7年前に恋人を目の前で山賊に殺されてるんだ」
「…」
「…俺とあいつは同時期に帝国軍に入った。初めて会ったときのあいつはそれはもう死んだような目をしていたよ。一目で訳ありだと分かるほどに。しばらく誰も寄せ付けようとしなかったんだが、ちょっとしたきっかけで話すようになってさ。そのときに帝国軍へ入った動機を聞かせてくれたんだ」
「…山賊への復讐のためか」
「そうだ。あいつ自身死に物狂いで鍛錬していた、全ては山賊を手当たり次第殺すために。恋人でも作ったらどうだと勧めたこともあったが…また同じ思いをしたくないからと断られてしまったよ」
「…それで、亡くした彼女をずっと想い続けているのか」
「ああ。きっと、彼女を死なせてしまった罪悪感のようなものを抱いてるのだろうな…なんせ根が真面目な奴だから」


「その話、私にしても良かったのか? 彼にとっては人に話したくない過去だろう」
「あんたがただの他人ならこんな話はしないさ。メルヴィナの保護者なんだろ? 知っておいてもいいと思ってさ」
「何故だ?」
「…時が経って、あいつもあの頃よりは表情が穏やかになってきた。けれど、もう前に進んでもいいんじゃないかと俺が言っても、彼女のことを一生吹っ切れないから、と返すんだ。そんなあいつをメルヴィナが変えてくれるのなら…俺は本気で応援したいと思う」
「…そういうことか。つまり君は、私に橋渡しをして欲しいと」
「頼むよ。見たところメルヴィナもロードに好意的だけど…誰かの後押しがないとあの二人は進展しなさそうだから」
「君は随分と友人思いで且つ世話焼きだな」
「よく言われる。人の世話より自分の相手を見つけろってな。紹介して欲しいくらいだよ、ハハッ」
「フフッ、それは自分で頑張るしかあるまい。私が紹介できるような女性は…一人いたか、リディアを知っているだろう? 彼女はどうだ。美人だぞ」
「なんか…前に同じ事をロードにも言われた気が…」


「あれ? 珍しいな、ハドバル。こんな時間まで飲んでるのか?」
「おお、ロード。ちょっとな、こちらの御仁と話が弾んで」
「ルーシスとね…。余計なこと話していないだろうな」
「なんだ? 余計なことって。あ、悪い。お前がメルヴィナのために馬を買ったことを先に話しちまった」
「いや、そんなことは別にいいんだが…」
「ロード。メルのためにありがとうな」
「いや…」

「ホワイトランへの護衛から始まって、お前ずっと彼女と一緒に居るだろ? 惚れてるのではないかと話してたんだ」


「またそれか…どうしてそうなる。俺はただ、ドラゴンボーンとしての彼女を守りたいだけだ」
「意地を張るなよ。女を避けていたお前が、自ずから女の側にいる理由なんて一つだろ。彼女がドラゴンボーンだからとか、大義名分でしかない」
「……」
「長い付き合いなんだ。お前の考えそうなことなんざ、大体分かるさ」
「ハドバル、お前…。ルーシスに俺の過去を話しただろ…」
「うん? なんのことだ」
「しらばっくれるな。俺だって同じくらい、お前の考えが分かるんだ。余計なことはしないでくれ」
「そりゃ悪かったな。ついついお前の世話を焼いてしまうんだよなあ」

「…ルーシスも。今の、聞かなかったことにしてくれないか。彼女に余計なことを知られたくない」
「お前はそれでいいのか?」
「俺はいい。彼女を守るだけでいいんだ。彼女とどうにかなりたいなんて考えてない」
「……そうか」


 

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