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33話 – 追い詰められたネズミ(3)

  • 2016.05.10
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 

リフテンの北門から外に出ると、衛兵がドラゴンと交戦中だった。
「なんと! これがドラゴンか!」
エズバーンは興奮しながらドラゴンに近寄ろうとする。
「おい、危ないぞ!」
ロードが止めようとするのも聞かず、彼は炎の精霊を召喚してドラゴンに向かっていった。


ドラゴンが地上に降りると、待ち構えたように衛兵を交えた数人で斬りかかる。この人数に集中攻撃されて、ドラゴンも再び飛ぶことなく倒れた。

ドラゴンソウルを吸収する私を見ると、エズバーンは目を丸くした。おそらく私がドラゴンボーンということに半信半疑だったのだろう。これで信じてくれたのなら良いが。

リフテンの南に回り、ホンリッヒ湖沿いにリバーウッドへと進む。その途中にあるハートウッド工場には、小さな宿屋もあった。


「もう追っ手の心配もないでしょう。少しここで休ませてもらいましょうか」

仮眠を取り、夜空が白む頃すぐに出発し、夕刻前にはリバーウッドに到着した。


「それで、ここがデルフィンの今までずっと隠れていた場所か? ふーむ」
町を眺めながらエズバーンが話す。
「あんたの隠れ住んでいた場所とは違って、明るくてきれいな所だろう?」
ルーシスが皮肉を言う。
「確かにな…。私にとってはあそこも慣れれば落ち着ける場所だったが…」
「あんなところが? …変人とはよく言ったものだ…」
ルーシスは同調を求めるように私を見た。

スリーピング・ジャイアントに入るなり、エズバーンはデルフィンの姿を見つけ駆け寄った。


「デルフィン! 私は…会えてうれしいよ。ずいぶん…久しぶりだな」
「私もあなたに会えてうれしいわ、エズバーン。しばらくね。本当にしばらく」
再会を喜び合うのも束の間、デルフィンはこちらを向いた。
「エズバーンを無事に連れてきてくれて感謝するわ。それじゃこっちへ。話しましょう。オーグナー、少しの間バーを頼むわ」
デルフィンは隠し部屋へと案内した。

「事情はメルヴィナから聞いたかしら。知っているわよね…」
「ああ、そうだ! ドラゴンボーンだ! まさにこの目で見た。猶予はない、場所を特定しないと…見せてあげよう。ここに持ってきている、どこにしまったかな…」
エズバーンは鞄の中をごそごそと漁り、一冊の本を取り出した。
「エズバーン、それは…?」
「少し時間をくれないか…」
数分間、エズバーンは本を読み、何かを調べている。
「ああ! ここだ。おいで、説明してあげよう」


「ここを見てごらん、アカヴィリのスカイ・ヘブン聖堂だ。リーチにあるアカヴィリの主要野営地のひとつを囲むように建てられている。スカイリム征服の間にな」
エズバーンは本を開き、地図の書かれているページを見せた。
「彼らは集めたドラゴンの伝説を石に刻むためにアルドゥインの壁を建てた。それがここだ。数世紀にわたる忘却との境界だ。思慮深く先見の明のあるやり方だった。アルドゥインの壁の名声は当時広く広まったにもかかわらず、古代の世界の不思議のひとつであるその場所は見つからなかった」
「エズバーン、何が言いたいの? アルドゥインの壁って? それがドラゴンを阻止することとどういう関係が?」
「アルドゥインの壁は、古代のブレイズがアルドゥインとその復活について知っている事全てを記録した場所だ。一部は歴史的事実、また一部は預言となっている。その場所は長い間失われていたのだが、私は再び発見したのだ。失われていたのではない、ただ忘れられていただけだった。ブレイズの書庫には数々の秘密が保管されていた…そのいくつかの抜粋だけ残しておく事ができた」
「つまり、アルドゥインの壁がアルドゥインの倒し方を教えてくれると?」
「ええと…そうだな、多分。それを見つけて、初めて確信が持てる」
「スカイ・ヘブン聖堂ね。あなたならきっと何か知ってるはずだって思ってたわ、エズバーン」


「エズバーンの言うリーチの地域なら知ってるわ。カース川峡谷にあるカーススパイアーと呼ばれている場所の近くよ。そこで会うか、一緒に行くか、あなたが決めて」
デルフィンが問いかける。
「そうですね…。準備もありますし、そこで落ち合いましょうか。現地にはどう行けばいいですか?」
「リバーウッドから? ファルクリースを抜ける南の街道が一番の近道ね。ホワイトランからマルカルスまで馬車を使って、その後西から入るという手もあるわ。どちらを行くにしても、リーチは今では無法地帯よ。至るところにフォースウォーンがいるわ。気をつけて」
デルフィンとエズバーン、私達は別々にスカイ・ヘブン聖堂に行くことになった。

部屋から出たデルフィンは、オーグナーに別れの挨拶をしていた。
「オーグナー、いよいよなの。宿屋はあなたにあげる。ここにはもう帰ってこないかも知れないわ。体には気をつけて、オーグナー。さよなら」
「ああ…そうだな。あんたもな、デルフィン。気をつけて」


宿屋を出て行くデルフィンを見送るオーグナーの横顔は、いつものぶっきらぼうな表情のように見えて、かすかに寂しそうな表情にも見えた。

デルフィン達は出発したが、私達は今晩はここに泊まり、明日の朝出発することにした。
夕食後三人で話し合い、ファルクリースを抜けるルートでカーススパイアーへ向かうことに決めた。
「馬を預けていたな、どうする?」
ルーシスがロードに尋ねる。
「ああ。明日は馬で行こう。ハドバルに頼んでいたこともある、今から行ってくるよ。メルヴィナも一緒に良いか?」
「私もですか? 分かりました」
「では私は先に休ませてもらうとするよ。ゆっくり友人と話してきたらいい」
席を立ったところをルーシスがそっと呼び止めた。


「メル。お前もゆっくりしてきな。あいつと話したいこともあるだろう?」
静かに頷いてロードの後を追った。

アルヴォアの家を訪ね、ハドバルを呼んだ。
「ハドバル、世話になったな。助かったよ」
「よお、ロード。無事に戻ってきたな。ちょっと待ってろ、今連れてくる」
ハドバルは厩舎から馬を連れてきた。


「流石に三頭の世話はきつかったな…」
「すまない、感謝するよ。あの馬か?」
「そうだ。上等な白馬だろ? ホワイトランの馬屋に来たばかりだとカミラが言っていた。少し小ぶりだが気性も穏やかで悪くないぞ」
「いい馬を手に入れてくれたんだな。明日にでも礼をしに行かないと」
ロードとルーシスの馬に隠れるように、奥に白馬がいた。


「どうしたのですか? その馬…」
ハドバルに尋ねる。
「うん? なんだ、聞いてないのか? この白馬はお前の馬だぞ、メルヴィナ」
「えっ!?」
驚いてロードを見る。
「ハハ、ごめん。驚かそうとしたつもりはないんだけど。馬に乗れるようになりたいと言っていただろう? リバーウッド・トレーダーのカミラにいい馬を手に入れて欲しいと頼んであったんだ」
「世話をしたのは俺だけどな」
横でハドバルが言う。


「でも、あの…。馬って高いのでしょう? そんなお金、持っていません…」
そう言うとハドバルが笑った。
「心配するな、メルヴィナ。前払いだ、ロードからのな」
「えぇっ!?」
もう一度驚いてロードの顔を見た。
「帝国軍の給金や、山賊退治の賞金なんかで結構貯まってたんだ。そんなに金を使うこともないからな。だから気にしないでくれ」
「気にするな、なんて…無理です」
立派な白馬を目の前に戸惑っていると、ハドバルが声を出して笑った。
「アッハッハ! こいつの好意だ、ありがたく貰っておけよ。それに、返品は出来ないからな?」
「そうです、ね…。ロード、本当にありがとうございます。早速、乗ってみてもいいですか?」
「もちろん。手伝うよ」

ロードに手ほどきを受けながら、一人で馬に乗ることができた。


「よかった、なんとかなるものですね…」
「よし、じゃあ早速歩かせてみようか」
ロードが横について手綱を引き、馬はゆっくりと進み始めた。

橋に差し掛かると、ロードは手綱を離す。
「大丈夫そうだな、そのまま手綱を握って。引っ張らないように。橋の向こうにかがり火が見えるだろ? そこまで行こう」
「はい」


「この子…本当におとなしいですね。安心して乗っていられます。ロード、本当に何とお礼を言えばいいか…」
「馬に乗せてもらうことを随分気にしていただろう? 君なら少し練習すれば乗れる様になると思って、勝手なことをしてしまった。気に入ってくれたのならいいけど」
「凄く嬉しいです。気を遣ってくださって…ありがとうございます。大切にします」
「ああ。かわいがってやりなよ。馬はその分応えてくれるからな」
「はい!」

橋向こうのかがり火のあるところで馬を止めた。


馬から降り、少し休憩をとる。
「これなら明日の朝は馬に乗って出発できそうだな。君が早く慣れてくれて良かったよ」
「いえ。あなたの手ほどきが上手だからです。馬もいい子ですし…。明日は足手まといにならないよう、頑張りますね」


「今夜は一段と明るいですね。空が綺麗…」
橋の上から夜空を見上げた。
「本当だな…。オーロラも綺麗だ」
ロードも隣に立ち、空を見上げる。

「あの、聞いておきたいことが…」
「ん?」
「ルーシスのことです。あなたの本心を聞きたくて…。彼のこと、許せませんか?」


「許せないというより、裏切られたという思いのほうが強いな…。なんでもこなせるし頭も切れるあいつを、心の奥では尊敬していたんだ。それが、俺の嫌いな賊だったと知って…混乱した、裏切られたと感じた。俺の勝手な思い込みだけどな。ただ…あいつは他の賊とは違うと言い聞かせる自分もいたんだ」
「それは、彼の人柄を知っているから…でしょうね。私が物心ついた頃から、ルーシスは一人で出かけることが度々ありました。大事な任務だと言って。私はそれを詳しく知ろうともしなかった。いつも美味しい食べ物や本を抱えて帰ってくる彼は笑顔でしたから。彼が賊として窃盗や殺人をしていたとは考えられません…。私は彼の言葉を信じています。過去の過ちは、もう十分に償ったと…そう思いたいです」
「俺も…そう思うよ。あいつが人を襲う賊のような残忍な性格なら、君をそんな性格に育て上げることなんて無理だろうから。分かっているんだけどな、頭では…。だから、ルーシスを信用したいと思ってる。今後も共に行動するんだ…時間は掛かるかもしれないが、元の信頼関係に戻れるよう努めるよ」
「ありがとうございます…。あなたの考えを聞けて良かったです。安心しました。大切な二人が仲違いをしてしまうのは辛いですからね…。実は、あなたがルーシスにも、彼に育てられた私にも幻滅して去って行ってしまうのではないかと心配していたのです」
そう言って軽く笑うと、月を見ていたロードは振り向いた。


「それはないよ」
「え?」
「ルーシスのことはともかく、君から離れる選択肢は無かったから」
「…」
「誓っただろう? 君を、ドラゴンボーンを守ると。君が俺を必要としてくれる間は…ずっと側にいる」
「…本当、ですか? …ありがとうございます」

”ずっと側にいる”…――その言葉が、何度も、何度も頭の中をこだました。

「あっ、そうだ、馬に名前をつけてあげないといけませんよね…。ええと…」
話を変え、気持ちを切り替えて夜空を見ながら考えた。
「あ、『極光号』なんてどうでしょう?」
ロードは素っ頓狂な声を出した。
「へっ? …ず、随分と渋い名前だな。いや、悪くないよ。そういやルーシスも自分の馬に『真珠号』と付けてたっけ。ハハ、二人とも名付けの感覚が似てるんだな」
「ロードの馬はなんと呼ぶのですか?」
「黒曜…」
「…フ、フフフッ。あなたも、似たようなものじゃないですか…」
「それもそうだな…変か?」


「いえ、違うのです。ごめんなさい、なんだかおかしくて…。名付けが変で笑っているわけではなくて…あなたと似た感覚だった事が嬉しくて」


「……そう」

沈黙が続いた。
示し合わせたわけでもないのに、二人同時に空を見上げる。
なんでもない動作の一致が心をくすぐった。

「…そろそろ戻りましょうか」
極光号に跨る私をロードが見上げる。
「帰りは、少し走らせてみるか? 教えるよ」
「はい。お願いします」
返事をすると、私の後ろにロードが乗った。


「…あの…?」
「ん? ああ、後ろにいたほうが落ちそうになったとき支えられるから。手綱の引き方もこれなら分かりやすく教えられるだろう?」
ロードはそう言って、手綱を持つ私の手に自分の手を重ねた。
「…~っ」
彼は親切心でこうしているだけ。頭の中で言い聞かせる。
「極光号は小ぶりだからな。あまり長くは一緒に乗っていられないだろうから、できれば一回で感覚を身に付けてくれ」
「…は、はい」
この状況で無茶を言わないで欲しい。
そんなことを思いながらも、ロードの説明をしっかりと聞きながら、馬を軽く走らせる。


「――そう、そんな感じ」
馬を走らせる振動よりも早く、私の心臓は早鐘を打っていた。

数分走らせ、宿屋の前に止める。
「ロード、先に宿屋へ戻ってください。私、もう少しこの子の世話をしていきます」
「分かった。馬はここに止めておけばいいよ」
ロードと別れ、極光号と対面する。

ふと思い立ち、そっと”声”に出してみた。
「Kaan…」
極光号は私を見ると静かに目を閉じる。
(もともとおとなしい子だから、効果があるのか分からないわね…)
首を撫でながら小さく笑う。
「…ありがとう。これからも、よろしくね」


 

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