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31話 – 追い詰められたネズミ(1)

  • 2016.04.23
  • 更新日:2018.10.08
  • RP日記

 

リバーウッドから馬車で二日かけてリフテンに到着した。

「盗賊ギルドの本拠地があるから、あまり近づきたくはない街だな…」
リフテンに初めて訪れるというロードは、心なしか不機嫌な顔つきで呟いた。

馬屋はリフテンの北門そばにあり、私たちは馬車から降りると北門から街へ入ろうとした。


「待て。リフテンに入りたいのなら、訪問者税を払ってもらう」
衛兵が遮る。
「そんなものを払う必要があるのか? この街は…」
ロードがいらつきながら訊く。
「この街に入るという特権のためだ。問題ないだろう?」
「理解できんな…」


「おや、この私からも税金を取るようになったのか?」
ルーシスが衛兵にそう言うと、衛兵は慌てた様子で門の鍵を開けた。


「あんたか。人が悪い、いるならそう言ってくれよ。鍵は開けた。そっちの二人は連れか、中に入れ」
「よろしい」
先に街へ入るルーシスを見たあと、思わずロードと顔を見合わせた。


「ルーシス。リフテンに誰か知り合いがいるの?」
「うん? まあな」
「あの衛兵の慌て様からして…結構位の高い人? 首長とか」
「そうだな。首長とも面識はあるが…」
「?」
「まずは、ブリニョルフを探そう」
「ええ、そうね」

街の中心部には露店が所狭しとひしめく。雑貨屋、防具屋、宝石屋…。怪しげな薬を売っている露店もある。
「正真正銘のファルメル万能血液薬だよ! 何千年も生きられる…他人の考えを覗けるよ!」


「ブリニョルフ。相変わらず胡散臭い商売をしているのだな」
ルーシスがその薬売りに声を掛けた。彼がブリニョルフだとルーシスは知っていたようだ。


「あんた…ルーシスじゃないか! 久しぶりだな、最近こっちには顔を出してくれなかっただろう?」
ブリニョルフはルーシスを見るなり驚きの声を上げた。
「ああ。忙しくてな」
「それにしてもあんたが人を連れてるのを初めて見たよ。何かあったのか?」
「いや。今回は人捜しだ。エズバーンという老人を捜しているのだが…心当たりはないか?」
「エズバーンねえ…。名前は覚えていないが、ラットウェイ・ウォーレンズに篭ってる爺さんがいたような…。ヴェケルなら詳しいかもな、ラグド・フラゴンで聞いてみてくれ」
「そうか、分かった」
「また旨い儲け話があれば回してくれよ。最近ギルドも懐が寂しくてさ、俺もこんな商売をしなきゃならないってわけだ」
「…そのうちにな」

…ギルド?
「ギルドって…盗賊ギルドか…?」
私が言葉を発するよりも先にロードが問いかけた。
「…あれ? あんたの連れならそういう人間だと思ったんだが…。まずかったかな?」
ブリニョルフはきょとんとした表情でルーシスを見た。
「いや、構わない。それじゃあな、ブリュン」


ルーシスはブリニョルフにそう言ったあと、こちらを振り向いた。
「…この街に来たからには、話しておかねばなるまいと考えていた。説明が必要だろう? 二人とも」

ルーシスは露店から少し離れた場所まで歩き、立ち止まった。


「…説明してくれ、ルーシス。あんた…盗賊ギルドと関係を持っているのか?」
「…まあな、だがギルドメンバーではない。盗賊ギルドと懇意にしている事は否定しないが。私は…元はシロディールの盗賊ギルドメンバーだった。同業者を一人殺し、組織を追われスカイリムに逃げてきた」
「…盗賊だったんだな」
「ああ、そうだ。だが誓って言う。私が盗賊ギルドで専門としたのは情報の操作や改ざんといったことだ。貧しい者を狙ったり、ましてや盗みを働くために殺しをしたことなどない」
ロードはルーシスを睨む。
「…賊なんてどれも同じようなものだ。結局は人から物を奪って私服を肥やしていたんじゃないのか」


「…これ以上言い訳はせん。お前が賊嫌いなのは知っていた。はじめのうちに打ち明けるべきだったな…すまなかった」
「そうして欲しかったよ…」


ロードは険しい表情で私を見た。
「…メルヴィナ。君はこの事を知っていたのか?」
「いえ。私も今知った事で…」
「本当に?」
「ロード。メルは本当に何も知らなかった、問い詰めないでやってくれ。責めるべきは私だろう?」
「…そうだな。メルヴィナ、すまないが一旦ここで別れよう」
「え?」
「この気分ではルーシスと共に行動できない。ここの酒場で待っているから、用が済んだら来てくれ。考える時間が欲しい…」


「…わかり、ました」

ロードはそう言うと、私達に目を合わせることなく一人宿屋へ入っていった。
「メル。すまなかったな…私のせいで」
「…ううん、仕方ないわ。いつかは知られてしまうことでしょう? あなたが昔盗賊だったとしても、私を拾い育ててくれたことに変わりはないから。例えロードがあなたと敵対してしまっても…私はたった一人の家族とも言えるルーシスが大切だから…あなたの傍にいる」
「……。…おっと、あぶない」
「え?」
「今のは効いた。うっかり恋に落ちそうになったではないか」
「…もう! 人が真剣に話しているのに!」
「すまん、つい。しかし、お前の家族は一人ではないぞ。グレイビアード達がいるじゃないか。アーンゲールおじいちゃんが聞いたら除け者にされたと泣くぞ」
「彼らは、家族と呼ぶには近寄りがたい存在だったから…」
「それもそうだな。だが、お前が幼い頃のアーンゲールは、孫をかわいがるじいさんそのものだったけどな」
「そ、そうだったの? 憶えていない…。想像できないわ」
「だろう?」
ルーシスが微笑んだことで、私も少しだけ顔を緩ませた。


街の下層をつきあたりまで進む。
「さて、ここがラットウェイの入り口だ。柄の悪い連中もいる、気をつけろ」


奥から話し声が聞こえる。
「――人の頭を殴る事だけ心配してろ。ギルドのことは任せておけ。分かったか?」
「分かってるって」
「ラットウェイの入口を確認してこよう。すぐ戻る」

「来るぞ。下がっていろ」
ルーシスが剣を鞘から静かに引き抜いた。


ごろつきの姿を見るや否や、ルーシスは相手に斬り込んだ。
「な、なん…っ!?」
突然のことに驚いたごろつきは膝を突く。
「…チッ、仕留め損ねたか。浅かったな」
倒れるごろつきに止めを刺そうと歩み寄るルーシスの背後に人影が見えた。
「ルーシス! 後ろっ!」
もう一人のごろつきは弓を構え、ルーシスに向けて矢を放つ。彼はそれを盾で防ぐと、そのまま剣で切り倒した。

「…先へ進もう」
「ルーシス、怪我は?」
「問題ない。この先にもごろつきはいるだろう、用心してくれ」
途中何人かのごろつきを倒しながら、下水道をさらに奥へと進んだ。


「メル。ロードのことは…心配するな、大丈夫だ」
「え?」
「あいつは『待っている』と言った。つまり、お前を置いて去っては行かないって事だ」
「そうだと、いいけれど…」
ルーシスとロード。二人の関係はぎこちなくなってしまうだろう。そうなってしまったら、私はどうすればいいだろう…。そんなことを考えているうちに、ラグド・フラゴンにたどり着いた。

目つきの悪い男がこちらを睨む。
ここにいる人は皆、訪問者の私達に対して警戒心のあるそぶりを見せたが、ルーシスだと気付くと笑顔になっていた。


「よお、ルーシス」
テーブルで食事をとっている男性が声を掛けた。


「ああ、デルビン。久しいな、変わりないか」
「ぼちぼちだな。おい、女連れとは珍しい…」
デルビンは私の顔をじろりと見る。
「手を出すなよ。私の大切な女性だからな」
ルーシスがそう言うと、デルビンはヒュウと口笛を鳴らした。
「それで、今日は何の御用で? 任務の依頼か、儲け話でも持ってきたか?」
「どちらでもない。人を捜しに来た」
「なんだ、残念」
まるで興味を失ったかのように、デルビンは目の前にある料理を口に運んだ。


カウンターに立つ男性にルーシスが声を掛ける。
「ヴェケル。人を捜している。エズバーンという年老いた男性に心当たりはないか? ラットウェイにいると聞いたのだが」
「彼はラットウェイ・ウォーレンズにいる。ほとんどそこを離れず、誰かが食糧などを運んでいる。イカれた老人だって話だ。ここでそんだけ目立つんだから、本当にイカれてるんだろう」
「ラットウェイ・ウォーレンズだな。ありがとう」
「気をつけろよ、彼を捜しているのはあんただけじゃないからな」
「…先客か」
「一足先にサルモールの連中が中に入って行った」
「…そうか。では注意しよう。メル、行くぞ」
「ええ」
ラグド・フラゴンから更に奥の、ラットウェイ・ウォーレンズへの扉を開けた。


 

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